【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。

気持ちの良い、すっかり見慣れた部屋の景色に露李はほっとして起き上がった。


夜間もつけていた豆電球を消して、縁側への襖を開ける。

寝ている間に降っていたのか雪がうっすらと積もっている。

雪だーと騒ぐのも皆が寝ていては申し訳ないのでできない。

口元を弛ませながら部屋へ戻り、箪笥から巫女装束を取り出す。

秋であれば庭掃きをしていたところだが雪だ。

道を作る以外ではなるべく掃きたくはない。

弾んだ手つきで装束を着て、長い髪を下の方で縛る。

足袋を履いてもう一度縁側に出た。


「あ、おはようございます露李様」


パタパタと歩いて来たのは海松だ。


「誰かと思ったら海松ちゃんだったんだね。おはよう」


ずっと感じていた気はこれか。

にっこり笑って返すと見るも嬉しそうに微笑む。


「相変わらず美少女」


口に出した瞬間、赤く染まる頬。


「露李様、またまた…じゃなくて、今からどちらへ?」


海松はあわあわと話を変えた。

露李の巫女装束を見るのは久しぶりだからだろうか、巫女の仕事と言えば決まっているのだが──


「お掃除と、ご挨拶。色々あって参拝どころじゃなくなっちゃったし。巫女としては失格級でしょ」


「お掃除なら私がいたします」


「ううん、良いの。私だって神影神社の巫女なんだから」

そう言って境内に向かう。



自分が戻って来て、前よりもさらに大きく感じる邪気。

神社では考えられない澱んだ気だ。


短命───。


己の運命を恨むことはしない。

自分の命に執着したことはない。

それに、風花姫に選ばれなければ守護者たちと出会うことはなかっただろうから。



でも。


皆の為に、私は生きよう。


死ぬとき。

願わくは、皆のために死ぬことを。