「───っ!」
守護者達が目を見開く。
恐ろしさ故ではなく、その美しさに。
透き通る金を帯びた銀の髪に、星屑のような金の瞳。
ある意味恐ろしい、汚れない神聖な空気を漂わせている。
額の一対の角はその気高い美しさを表しているようだった。
手に持った雹雷鬼からは金銀の光。
「綺麗だ」
疾風が惚けたように呟くと、露李は頬を赤く染めた。
「まー露李にしちゃ、だけどな」
「結先輩、それ褒めてんですか、貶してるんですか」
結に氷点下の眼差しを送ってから結界に向き直る。
「露李、いける?」
水無月はまだ申し訳なさそうに眉を下げている。
「大丈夫」
最後にもう一度だけ深呼吸してから、意識を雹雷鬼に集中させる。
気がじわじわと雹雷鬼の周りに漂い始めた。
雹雷鬼自体の輝きに露李の気がプラスされ、息が詰まるほど。
「─結界解除。破!」
雹雷鬼を結界に向かって振り下ろした。
縦と横で十字を切ると、ガラスの割れるような音と共に結界が破られる。
ふうっと息をついて、露李は困ったように首を傾げて水無月を見た。
「どうやって元の姿に戻れば…?」
意識が無くなると元に戻るのは知っていた。
今まで力を使った直後は気を失うかしていたからだ。
しかし今失神するわけにもいかない。
水無月はああ、と透けた身体で軽く笑った。
「心の中で『戻れ』って念じてみて。慣れたらそれなしでも戻れるよ」
「分かった。ありがとう」
──戻れ。
ふわっと金の光が露李を包み、元の姿に戻るのが分かった。
ほっと安堵の表情を浮かべる。
が、すぐにさっと青ざめる。
「氷紀兄様!?」
水無月がやたらに透け、今にも消えそうだ。
「大丈夫だから落ち着いて露李。たぶん結界が破られて縛りが解けたんだよ。きっと戻れる──ほら」
にこっと笑顔を残して──水無月が消えた。
「氷紀兄様っ!」
「落ち着いて下さい、露李先輩!水無月さん本体を見て下さい!」
取り乱す露李だが、言われるがままに水無月の身体に目を向けた。
微かに瞼が震えている。
「露、李ー…」
名を呼ぶと同時に目が開かれた。


