「おー、行ってこい行ってこい!つか俺も行く!」
結がにかっと露李に笑いかけた。
「俺も行きます」
「置いてきぼりはごめんだなー」
疾風と文月も立ち上がる。
「僕も行きますよー!」
「露李に何かあったらたまんねぇからな」
静と理津が露李に目を向ける。
「…貴様ら、」
「帰ってきたばっかだろ。水無月、顔が疲れてんぞ」
指摘されて、はっとする。
─気づいていたのか。
自分から望んで今の状態になったといえど、魂そのものでいるのは容易なことではない。
有明の屋敷では彼女の術で浄化されていたが、そこから離れた場所に長い間いたのだ。
感情豊かな人間の世界だ、良い気ばかりではない。
普通なら身体や力で守られているはずの魂が直に邪気に触れているのだから、少しでも守ろうと僅かな力を使い続けていたのだ。
邪に染まらないための最善策だが、果てしない疲労感が伴う。
──そんなこと、露李に言えるわけないけどねぇ。
露李がある意味鈍感で良かった、と心の中で小さく笑う。
きっとこれを知ったら泣くだろうから。
「…頼む」
意味が分かったのか、にやりと笑みを返してくる。
「海松、と言ったか。すまない」
思いがけない言葉に少し目を見開いた後、海松はゆっくりと頷いた。
***
一度部屋を出て、海松の案内である蔵へ通された。
真っ暗で電気もないような蔵だ。
「…本当に遺体安置所じゃないだろうな」
「違いますよ。遺体安置所は隣の蔵です」
海松がのほほんと答えるが、水無月は顔をしかめた。
「洒落にならん」
俺は死んでないぞ、と海松を睨む。
真っ暗な空間にぼうっと紫の光の球が浮かんだ。
「ありがと、理津」
「大したことじゃねぇよ」
露李に後ろから抱きつく理津。
「紫、似合うなお前。エロい」
「なんか複雑なんだけど」
苦笑いしながらも頭上にある理津の髪をくしゃっと撫でる。
「…な、何だよ」
「んー?別にー?」
「生意気だな」
「上等」
理津が身体を離し、露李に触れようとした瞬間。
ゴオッと二人の間に風が吹いた。
誰かは一目瞭然なのだが、当の本人は何事もなかったような顔をしている。


