「で、露李~」
「すみません氷紀兄様…じゃない。私はどうしたらいいの、ひの、氷紀」
片言の露李を愛しげに見やってから水無月は口を開く。
「そうだなぁ、まず身体のとこに行かないと」
そこへ、海松が式を連れて入ってきた。
夕食を運んできたようだ。
少女の姿の蒼炎と星水晶が驚くほど沢山の皿を運んでいるのに露李は目を丸くする。
守護者たちには当たり前になっているようで、何食わぬ顔で話している。
露李のいない間、海松はご馳走を作り続けていたようだ。
「氷紀、大丈夫なの?」
敬語を外されたことにまた頬を緩めつつ、水無月は首を傾げた。
「何、どういうこと?」
「お腹空いてたら支障が出ない?何日も食べてないんだし…」
ぶは、と吹き出す水無月。ついでに守護者たちも同様に。
「ははっ、あー…露李らしいね。本当可愛い」
褒められているのか貶されているのか。
「な、何?」
「魂に空腹があるわけないでしょ。胃袋が無いのに」
そうか、ないのか。
ゆるゆると身振りだけで頭を撫でられながらそれもそうだと納得する。
「あ、でも」
ふと水無月が呟いた。
「食事が冷めるな」
守護者たちが少し目を見開く。
何だ、と睨まれ結がニヤリと笑った。
「お前が気を遣うとか、空から槍が降るな!」
「頭は正常か、風雅。空から槍は降らん。雨や雪ならまだしも、そんな人工物が降るはずがない」
「言葉のアヤ!真面目に答えてんじゃねー!」
「でも水無月なら雨雪よりも痛そうな槍も有り得るんじゃない?」
文月が面白そうに頬杖をついた。
「…チッ、この俺が気を遣ってやったというのに」
不機嫌マックスの水無月が舌打ちすると、海松と露李は顔を見合わせた。
「ふふっ」
思わず笑いが込み上げてきた。
「露李様、水無月様。行って来て下さい」
「いいのか?」
「大丈夫です。皆でご飯、食べましょう」
海松が優しく微笑む。


