有明様に言われてから、少しずつ浮かび上がってくる光景。
それは自分自身の記憶。
蓋をしていた記憶。
『やめてっ、露李お願い!!』
『逃げろおおお!!』
貪欲に力を欲していた。
あの感覚を思い出して身震いする。
それがいくら小さい頃であっても許されない。
我を失ったのは、私。
「露李」
水無月の声が優しく耳に入ってきた。
「今はまだ、話さなくて良いから。だから、そんな顔しないで」
うん、と頷く。
言うのが怖かった。
心の準備ができるまでの時間を水無月がくれた。
窓から入ってくる月明かりが、二人の鬼をそっと照らしていた。


