確かに触れた手は冷たい。
この寒い中、皆私のために、と申し訳なくなってしまう。
ぽんぽんと疾風の頭を撫でる。
露李はその綺麗な碧の髪が好きだった。
「ほら、早く中入ろ。離れてくれないと動けないから」
そこまで言ってから、あ、と海松を伺う。
後ろから抱きつかれているために、見るのには不自由しない。
「私、入っても良い?──って、え?」
初めてその異様な光景に気づいた。
海松は顔を真っ赤にして、覆った手の隙間から露李を見ているし、守護者たちに関してはそれぞれの色をした気を──否、殺気を放っている。
水無月は人でも殺せそうなほど鋭い眼光を露李たちに向けていた。
ぞわっと寒気を覚える。
「わた、私また何か悪いことした!?」
「露李、今すぐその雑魚で、底辺で、脆弱で、変態で、趣味の悪い、センスのない輩から離れろ!」
水無月が叫んだ。
いや、輩って。
「でも疾風寒がってるし…でも兄様、兄様の眼帯も私どうかと…」
うーん。似合ってはいるけど、昼日中も眼帯してるしなぁ。
「露李っ!そんなこと思ってたの今まで!?」
「日中も着けて歩いてます…るよね?何か黒ずくめのベルトの多い服着てるし。第一印象は、対悪魔装備のお兄さんです、あ、だよ」
「俺は露李を蝕むヤツと戦うだけだよー。対クズ装備」
ううっと項垂れながらも、やっぱため口慣れてないねと苦笑。
「似合ってはいるけど」
「ありがとう!」
水無月は満面の笑みで顔を上げた。
そしてもう一度疾風を見据え、口を開く。
「早くどけ、この変態が。露李が貴様に蝕まれたらどうする」
「寒い」
「露李を湯たんぽ代わりにするとほざくか」
「寒くて眠いんだよ…」
「ならば一生目覚めないようにしてやろう。寒さを感じなくて良くなるが、どうだ?」
水無月の変わりように驚きながらも、露李はひしひしと迫ってくる殺気に目を向けた。
「だから皆、怖いって!!静くんまで!」
「え?何のことですか?」
静はきょとんと首をかしげ、自分の周りが萌黄色の気に染まっているのを見て、目を見開いた。
「あれ?」
「無意識に殺気を出さないで下さい!!」
結がすうっと深呼吸する。
「疾風。俺は待ったぞ?恨むなよ?」
何のことだろうと露李は首を傾げた。
次の瞬間、
「ローリングウインドォォォ!!」
「きゃああああ!?」
風が吹き荒れた。
「何してんですか!?ローリングウインドって何ですか!?」
必死に叫ぶが、いつも結をたしなめる文月もにこにこと黒い笑みを張りつけている。


