「よし、じゃあよろしくな露李」
風雅が笑う。
「皆様、お夕食です。すき焼きとちゃんこ鍋、どちらを召し上がりますか?」
タイミングを読んで海松が尋ねた。
「肉。すきやき。ですよね結先輩?」
朱雀が不敵な笑みを浮かべる。
「おー勿論だ!いいな文月!」
「ん、問題ないよ」
確かにすきやきは美味しい…けど。
露李はノリノリな彼等に目をしばたたかせる。
静以外の皆さんが目を爛々とさせているのは少し怖い。
そんなに美味しいのか。
正直すき焼きはあれば食べるし美味しいと思うけれど、積極的に食べたいと思ったことはあまりない。
露李が呆然と四人を眺めていると、知恩がくすりと笑った。
「不思議ですか?」
「え?」
「すごく不思議そうな顔してましたよ。露李先輩はすき焼きを好んで食べたことないんでしょう?」
「あ、まぁ…」
なぜ知恩がそんな面白そうに自分を見るのか分からずに曖昧な返事をする。
「疾風くん達がどうしてあんなに食いついているのか分からない、といった所ですか」
「そうだね…」
すごい観察眼だな、と内心舌を巻く。
「海松ちゃんのすき焼きは絶品なんです。僕も本当はこってりしたものとか肉とかあんまり好きじゃないんですが、あれだけは食べられるんですよ」
それはすごい。
肉が苦手な人にすき焼きの旨みを伝えるなどとんでもない腕前だろう。
「お腹すいてきたかも…」
ぼそっと呟いた言葉に、また知恩は嬉しそうに微笑んだ。


