「姫…お前、美味そうな匂いがするな」
振り向くと、灰色がかった茶色の髪に紫の瞳の男が色っぽく笑っている。
「理津お前…!女のうなじに!」
風雅が目を丸くした。
…少し羨ましそうに。
「なんだ結、羨ましいのか?」
「先輩と敬語を使えー!」
「はっ、何を喚いてんだか。俺は水鳥 理津(みずどり りつ)。同学年」
仲良くしようぜ、と言われるものの。
何となく今はあんまり仲良くしたくない、というのが本音。
首筋に残る感触が生々しい。
「お前は理性の欠片もないな、理津。理津の『理』はお前のばあちゃんが理性と品格のある子に、って意味も込めて付けたんだと言ってたけどな」
朱雀が水鳥を睨み付ける。
どうやらこの二人、反りが合わないらしい。
「ああもう理津先輩も疾風先輩も!すみません、神影先輩」
二人をとりなしたのは可愛らしい男の子。
くるんとした萌黄の瞳が子犬のように可愛らしい。
黒髪が滑らかに煌めく。
「つ、露李でいいですよ」
露李の言葉に顔を綻ばせる。
「ありがとうございます、露李先輩!知恩 静(ちおん しずか)です。よろしくお願いします」
先輩と呼ぶ辺り、年下か。
あまりの可愛さに目を細めていると、それを見ていた風雅が知恩を羽交い締めに。
「何するんですか結くん!」
「うるせ!先輩だ先輩」
わぁ、何だか分かんないけど理不尽な。
露李が小さく笑った。


