「露李様、ここですわ」
「ありがとう」
襖を開けて入ると、座敷に男が五人立っていた。
風雅もその中にいる。
「巫女の里から参りました、神影 露李と申します」
そう告げてぺこりと礼をすると、即座に五人は露李の前で右手を左胸にあて、跪いた。
「風花姫様」
五人揃って呼ばわったが、返事をできずに固まる。
ことごとく力の差を見せつけられて、この上何が言えただろう。
力のない自分を守る守護者たちに。
「か、顔を上げてください。私はそのようなことをされる身分ではありません」
「謙遜するなって!」
元気な声をあげたのは風雅だ。
「結さん…」
気持ちが和んだ露李がほっと笑う。
「あー露李!先輩がついてねーぞ」
急に風雅が騒ぎだした。
どうやら先輩呼びを気に入ったようだ。
「結は背が小さいから仕方ないねぇ」
穏やかな毒舌を放つ、優しげな雰囲気の長身の男が笑って言った。
浅葱色の瞳にキラキラした金茶の髪をしている。
「俺は大地 文月(だいち ふづき)といいます。結と同じで高二、姫様の一つ上です。こいつが無礼者で申し訳ありません」
「あ…よろしくお願いします、大地先輩。あの、皆さん敬語は必要ないので、できれば名前も呼び捨てて下さい」
露李が困ったように言うと大地も同じような顔をする。
「そうですか?ありがとうございます、では遠慮なく。俺は文月でいいよ。じゃあ、露李ちゃんで良いかな」
「勿論です」
「…では、そのようにさせていただきます」
隣から口を出したのは背が高く、凛々しい雰囲気の男子だ。
透明感のある碧のような美しい髪に藍の瞳。
「お願いします。えっと…」
「俺は朱雀 疾風(すざく はやて)。同学年だ、よろしくな」
「よろしくお願い致します、朱雀さん」
と、返事をした所へ。
首筋に温かい息がかかり目を剥く。
「なっ!?」
思わず大きな声を出してしまって後悔した。


