【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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鈍痛で目が覚めた。

きちんと布団がかけられ、障子から光が差し込んでいる。


「おはよう、花姫」


「え、あ…おはようございます…?」


隣から声がしてぎょっとする。

碧色の髪に、藍色の瞳。霧氷だ。

誰何せずとも容姿で分かった。


「ていうか私、花姫じゃ」


ないんですけど。


「身体の具合はどうだ?急に倒れたから驚いたぞ」


「大丈夫です。ありがとうございます」


そうかそうか良かったと安堵する霧氷に笑いが込み上げる。

怖そうなイメージがあったが、優しい人だ。


「ここはどこですか?」


「どこって、貴女の家だ」


「ここ私の家なんですか?


「そうだ。忘れたのか?」


「あ、いえ。確かに見覚えがあります」


そうだ、私の家だった。

私の。


「庭に出ないか?布団はそのままにしておけ、式神にやらせよう」


霧氷がパチンと指を鳴らすと、音もなく少女が二人現れた。


「霧氷様」


「布団を片付けておいてくれないか」


「承知いたしました」


少女たちを見たことがあるような気がして、露李は首を傾げた。


「蒼炎…星、水晶…」


口から勝手に出た言葉に今度は霧氷が首を捻った。


「何だ、それは」


「この子達の名前です」


「式神に名前はつけていないが…」


考えれば考えるほど分からなくなる。


「気にするな、記憶が混濁しているみたいだからな」


こくりと頷く。

どうしてか、懐かしいような感覚。

霧氷の髪色も、瞳も。

泣きそうなくらいに、懐かしい。

大切な大切な、何か。


思い出せない。頭が痛い。


「花姫。さあ」

「はい。霧氷様」


にっこり笑ってこちらへ下りてくる露李に、霧氷は口元を嬉しそうに弛めた───。