「君たち、露李に関わることだからよく聞きなよ」
突然柔らかい口調に戻った水無月を、結以外の四人は唖然として見ている。
当たり前だ、急に『貴様』呼びから君たちなどと言われれば誰でも驚く。
上から口調は変わりないが、さきほどまでのことを考える
れば気味が悪い。
「てめぇ…あんだけ馬鹿にしてた奴が何吐かしてやがる」
理津が鋭い眼光を飛ばすが当の本人は涼しい顔をしている。
疾風、文月、静は神妙な面持ちで黙ったままだ。
「まず、俺たち一族のことからだ」
「あぁ、鬼とか言ってたな」
結が頷く。
「神影の一族というのは元は鬼一族の総称だ。そして、その中でも最も強い力を誇る家がある。──秋篠、夏焼、春月、冬高の四つ。俺は秋篠、露李は夏焼家ということになる」
「ちょーっと待て。露李は捨て子じゃなかったのか?」
結が盛大に顔をしかめて尋ねる。
「…その顔で話すな。この俺でも恐ろしいぞ」
「ハッ、ついにお前も風雅 結様が怖くなったかー!」
「二重人格なのか…?」
水無月を見ていた疾風が全力で引いた、という顔で呟いた。
露李がいたときとは全く違う対応にいっそ感心できるほどだ。
「結は難しいこと考えるの苦手なんだよー。ね、結」
「うるせー!つか子供扱いすんな、気持ち悪い」
「先輩方!真面目に聞きましょうよー…」
「話になんねぇな、アホが」
「貴様、俺の話を聞く気があるのか?」
水無月が気を放ち出した。
しかし前の時のように身を削られるような感覚はない。
「お前、何か気配が変わったな」
水無月はため息をついて結を見据えた。
「今から話す。頼むから遮るな」
コホンと咳払いをしてから水無月がまた話しだす。
「元は神影は鬼一族の総称だったが、今は違う。鬼の血を少しずつ受け継いだ人間、と言った方が正しい。故に、力を抑えられずに発動させた力が外部の者には超能力に見える。だからあいつらは思い上がった雑魚だと言うのだ」
「露李先輩が捨て子っていうのは…?」
「露李は夏焼からの捨て子だ。…捨て子は正しくないな。露李が小さいとき、何者かによって夏焼家が滅ぼされた。よって、神影一族が引き取ったということになる」
「何者か?」
疾風が眉を寄せて訊いた。
「それは分からない。だが、露李が風花姫になることを仕向けられたということは確かだ」
「何だそれ…」
「ていうかそれどこで手に入れた情報?」
文月が水無月に尋ねる。
「有明様だ。あの方は沢山のことを把握している」
「ふーん、有明様ねぇ…」
文月は腑に落ちないようだ。


