何を言えば良いか分からない。
しばしの沈黙が訪れる。
「結。どうするの?」
結の肩にポンと手が置かれた。文月だ。
「あ?何がだ?」
「水無月。追い払うの?」
思わず黙りこんだ。
愛しげに露李を抱き締める水無月を追い払うわけにはいかない。
だがしかし、露李を奪われたくもない。
「俺は戦うべきではないと思います」
疾風が静かに結の目を見て言った。
「あー、俺も同感だ」
疾風に続き理津も気だるそうに賛成する。
「僕もです」
静もこくこくと頷く。
「文月」
「俺は皆に任せるよ」
文月の返答に結は困ったように、だが少し懐かしそうに笑った。
そして水無月と露李の元へ。
「…なぁ水無月」
呼ばれた水無月が顔を上げる。
「何だ」
「一応訊くけどよ。お前仲間はどうした?」
「…なぜ、そんなことを訊く」
「お前、しばらくここにいねーか?」
思いもよらない言葉だったのだろう、水無月は驚いたようにその金の瞳を見開いた。
そしてしっかりと結を見つめて、口を開く。
「なぜこの俺が、貴様らの世話にならなければならない。それに…俺が言うのも何だが。分かっているのか、俺は敵だぞ」
何とも不遜極まりない態度だが、一応の認識はあるのか訝しげに水無月は守護者たちに問うた。
結は気にした様子もなくにかっと笑う。
「露李の目を覚ましたいのは俺たちも同じだ。何か事情は知らねーけど、もう帰れないんだろ?」
「帰れない訳じゃない。帰らないだけだ」
「面倒くせーやつだな…悔しいが救出したのはお前だ。相応の恩がある。行くぞ」
「浮遊!」
タイミングを見計らった静が呪を唱えた。
「なっ!」
露李の身体に萌黄色の呪の鎖が巻き付き、中に浮く。
「貴様…!」
「何?君が頑固に露李ちゃんを極寒へ連れ出すみたいなバカな選択するからいけないんでしょ?こっちの方がよっぽど賢いと思うけど」
間髪入れずに言い放たれた文月の言葉に水無月は顔をしかめる。
図星だった。
「寒ぃ、早くしろ」
「ほら、理津もああ言ってんだよ。寒い。っしゃ行くぞー!」
勢いで負かされた形で、露李至上主義の水無月は中へと歩みを進めた。


