【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく


一際強い光が露李から放たれた時。

ガキィィンという音と共に何かが降ってきた。

反射的に結が風の刃でそれを受け止める。


「ぐ…」


物凄い力だ。腕が千切れそうな錯覚を覚える。


「風雅、邪魔をするな」


水無月だった。

金色の瞳を一層光らせ、驚くほど強い気を放っている。

普通なら死んでいるぞ、と水無月は薄く笑う。


「普通じゃねーからな!」


水無月の炎雪鬼を薙ぎ払う。


「退け」


「露李の時とは随分違う態度じゃねーか」


「露李に嫌われてしまえば俺は生きていけないからな」


水無月が地を蹴った。

結も身構えたが──違った。

水無月は炎雪鬼を握った手を大きく振り上げた。

思わず目を瞑るほどの銀の光が辺りを包んだ。

それは露李のものとは違う。水無月の力だ。

その強さから、持てる全ての力を炎雪鬼に乗せているのだと分かる。

ガラスが割れるような音がした。

しかしその大きさはガラスとは桁違いだ。


守護者達が次に目にしたのは、意識のない露李を強く抱き締める水無月の姿だった。


「露李、大丈夫だよ…もう君に涙なんて流させないから。辛い思いも、寂しい思いも…ずっと一緒だ」


優しく語りかけるような声。


「…水無月、」


結が水無月に歩み寄る。


「…貴様のような低俗な者には分からない。露李の苦しみが分かるはずがない。露李の記憶を消せるだけ消したというのに…身体が覚えている。心が覚えている」


掠れた声で紡がれた言葉に結は表情を険しくした。


「…どういうことだ」


できれば当たって欲しくはない。


「露李は、神影から何度も殺されかけている」


絶句した。神影とは何だ。

風花姫を輩出する、神聖な血筋ではなかったのか。


「そして露李はあのババアの娘ではない。露李は捨て子だ」


「捨て子?露李は直系の血筋だろうが」


「神影の血ではある。だがあのウジャウジャいるその辺の輩とは比べ物にならない神聖な血の純血だということだ」


鬼の由緒正しい、四家のうちの一つだ。


水無月はそう言いながら露李の頬を人差し指で撫でる。