【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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露李が眠りについてから三週間。

守護者たちはまた学校を終え、いつものように神社へ向かっていた。

露李がいないだけで沈黙が幾度と無くある。

のどかな田園風景は見慣れているはずなのに、露李の声が聞こえないと妙によそよそしく感じる。

もう打つ手はないのかもしれないというマイナスな考えも五人の頭に浮かんできてしまう。

結界にも異常はなく。

皮肉なことに、露李があの球の中で眠りについてからの花霞は邪気も放っておらず穏やかそのものだ。


「…何だこれ」


ふと顔を上げた結が呟く。

ちらちらと雪のようなものが舞っていた。

妙に惹きつけられるそれにはどこか見覚えがある。


「雪かな?」


「にしてはよく光ってるっすよ」


文月と疾風が手をかざしながら答えた。

静と理津も驚きの声を上げる。


「溶けない…!」


「妖気だ」


この銀は。


「露李!!」


結が走りだした。四人もそれに続く。


「お前ら!!風で後押ししてやる、行くぞ!!」


ゴオッと一陣の風が吹き、守護者たちの背中を押した。

みるみる翡翠を帯びた風のトンネルができる。

その中をただひたすらに走った。


「露李!!」


露李の眠る球体から、銀の光が迸っている。

しかし球体の中はキラキラと星屑が散るような光が舞っているだけだ。


「何なんだ、これは…!」


疾風は悔しそうに歯を食い縛る。


「露李!!聞こえるか!?」


結が球体を叩く。

悪い夢でも見ているかのように顔を歪め、唸っている。

眉間によったシワが深まるばかりだ。


「露李ちゃん!」


「露李先輩!」


「露李!!」


呼んでも、聞こえない。

露李の頬に一筋、水の線ができた。


「何、泣いてんだよ露李…!」


結が腕に風の刃を造り出して球に叩きつける。


「くそっ!」


疾風の拳が球に降り注ぐ。


「発芽!!」


「幻炎!!」


「破!消滅!」


文月の出した大木も、理津の紫の炎も効かない。

静の呪も効かない。


無力感がことごとく押し寄せた。