食卓に所狭しと並べられたご馳走。
それらが全て、静には現実離れしたものに見えた。
皆が黙々と食べる夕食─にしては遅すぎるが─は、本当に久しぶりで違和感すら覚える。
静の家では無言で食べるのが定着していた。
団欒からは程遠い食事だった。
守護者として任命されてからは一人で食べていた。
昔で言う、長男の優遇のようなものだ。
家督を継ぐ長男が個室で食事を摂っていたように、知恩家一の実力を持つ静もまたそうだった。
露李が来てから守護者たちといる時間が多くなり、全面警護になってからは同居までしていた訳だが。
そのせいか忘れていた。
無情に静かな中で食べる食べ物は、悲しいほど無機質な味であることを。
美味しいはずの米は砂を噛むようで、泣きたい衝動に駈られる。
「何で…」
こんなにも。
仲間がいるのに、一人じゃないのに、どうして。
形だけの家族との食事の時のような気持ちになるんだろう。
隔離され、一人で食べていた時のような気持ちになるんだろう。
寂しい、だなんて。
「静?」
理津が訝しむように見つめてくる。
「いえ。大丈夫です」
こんな感情、知らない。
「静さん。無理をなさってはいけませんよ」
「分かってますよ。ありがとうございます、海松ちゃん」
曖昧な笑みを海松と理津に向ける。
露李先輩がいない。
『静くんは優しいね』
『ありがとうー!』
眩しかった。
どんなに重い使命を背負っていても明るい露李が。
自分そっちのけで誰かを救おうとする。
その姿が時には痛いくらいに心に刺さって。
皆が目を逸らしていたことにさえ、彼女だけが立ち向かって行った。
だから、守りたいと思った。
目を逸らしちゃいけないと気づいたときには遅かった。
その証拠に彼女は目覚めない。
だから、今度こそ。
──露李先輩。
僕たちが貴女を助けます。
静は心の中で語りかけ、肉じゃがを口へ運んだ。


