*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
ここはどこだろう。
露李は暗い中で目を覚ました。
手探りに歩くが、伸ばしたその指先に触れるものはなく、ただただ困惑するばかりである。
ただの暗闇ならまだ良かったかもしれない、しかしこの空間はどこか違っていた。
心地良すぎるほどの温度、甘ったるい空気。
普通ならばそれだけで満足出来てしまうような空間だ。
しかし露李は停滞しているのが苦手だった。
このよく分からない空間の中で、警戒心もなく安心してしまうことに不気味さを感じずにはいられない。
何か忘れている。何か大切なものを。
『霧氷、様』
誰かの声が響く。聞き覚えがある声だ。
頭が痛くなるような錯覚を覚えて、思わず額を押さえる。
「何これっ」
気持ち悪さをかき消すように怒気を含んだ声で呼びかけるが、もちろん応答はない。
と、三メートルほど先に人が現れた。
碧とも白とも、透明とも─美しい、何とも言えない髪色の男。
見たことある。
確か、風花姫の記憶を見たときにいた人。
名前は霧氷で。
世を業火で炙ったとかいう、恐ろしい人。
でもまだ引っかかる。
私、あの髪色をどこかで───。
『花姫。共に行こう』
優しい笑顔は、そんな恐ろしい人のものではない。
『霧氷様、どこへ行くと言うのです…?』
一際大きく響く花姫の声。
『貴女を守りたい。貴女がもう二度と傷つかないように、共に行こう。』
『私の、居場所は…ここです』
『貴女はもう、傷つかなくて良い!』
霧氷の視線が露李を貫く。
──私の身体から、花姫様の声が出てる。痛いのはそのせい?
「私はっ、違う──」
『花姫、どうか』
「私は花姫じゃ、」
やだ、怖い。私は神影 露李。花姫じゃない。
そんな慈しむような目で見ないで。痛いの。
胸が痛い。嫌、助けて。
私じゃなくなる。ダメ、私は。
「霧氷、様っ、」
口が勝手に動く。意識が遠退く。
『花姫…』
「霧氷さ、むひょ、様」
皆、やだ、助けて───。
皆って、誰───?
ここはどこだろう。
露李は暗い中で目を覚ました。
手探りに歩くが、伸ばしたその指先に触れるものはなく、ただただ困惑するばかりである。
ただの暗闇ならまだ良かったかもしれない、しかしこの空間はどこか違っていた。
心地良すぎるほどの温度、甘ったるい空気。
普通ならばそれだけで満足出来てしまうような空間だ。
しかし露李は停滞しているのが苦手だった。
このよく分からない空間の中で、警戒心もなく安心してしまうことに不気味さを感じずにはいられない。
何か忘れている。何か大切なものを。
『霧氷、様』
誰かの声が響く。聞き覚えがある声だ。
頭が痛くなるような錯覚を覚えて、思わず額を押さえる。
「何これっ」
気持ち悪さをかき消すように怒気を含んだ声で呼びかけるが、もちろん応答はない。
と、三メートルほど先に人が現れた。
碧とも白とも、透明とも─美しい、何とも言えない髪色の男。
見たことある。
確か、風花姫の記憶を見たときにいた人。
名前は霧氷で。
世を業火で炙ったとかいう、恐ろしい人。
でもまだ引っかかる。
私、あの髪色をどこかで───。
『花姫。共に行こう』
優しい笑顔は、そんな恐ろしい人のものではない。
『霧氷様、どこへ行くと言うのです…?』
一際大きく響く花姫の声。
『貴女を守りたい。貴女がもう二度と傷つかないように、共に行こう。』
『私の、居場所は…ここです』
『貴女はもう、傷つかなくて良い!』
霧氷の視線が露李を貫く。
──私の身体から、花姫様の声が出てる。痛いのはそのせい?
「私はっ、違う──」
『花姫、どうか』
「私は花姫じゃ、」
やだ、怖い。私は神影 露李。花姫じゃない。
そんな慈しむような目で見ないで。痛いの。
胸が痛い。嫌、助けて。
私じゃなくなる。ダメ、私は。
「霧氷、様っ、」
口が勝手に動く。意識が遠退く。
『花姫…』
「霧氷さ、むひょ、様」
皆、やだ、助けて───。
皆って、誰───?


