「……つっ…」
ザシュっという鈍い音がして、一拍遅れてぬるりと光る赤い液体が腹から染み出してきた。
「何でだよ、」
死ぬほど痛くはない。
立っていられるほどの痛みではある。
だが、目の前にあるものが信じられない。
「未琴様…」
「結、貴方が逆らうからいけないのです」
狂気が宿った、焦点の定まらない目。
腹部に刺さった青い式。
「道具のくせに……貴方も……露李も、道具のくせに!!」
ヒステリックな叫びが、その場にいるものを騒然とさせる。
露李の銀に捕らえられたままの宵菊たちでさえ背筋が寒くなった。
「未琴様!どうしたというのですか!!」
疾風が叫ぶが、届かない。
「ババア!」
「未琴様!」
「おばさん!」
理津、静、文月の声も届かない。
「使えない道具なんて、」
未琴が青の光を手から出現させた刹那。
「これ以上は……鬼の矜持が許さん」
グサリ。
生々しい音が、再び響いた。
確実に心臓を貫いた炎雪鬼を、一瞬で未琴から抜き出す水無月。
「氷紀…」
名を呼ばれても冷たい目で未琴を見下ろし、露李の方を向いた。
「どうして起きないの、露李」
ゆっくりと露李に歩み寄る。
「どうして」
分からない。
「露李っ、」
守護者たちが球に駆け寄る。
閉じられた瞼は、穏やかそのもので。
ただ、喪失感だけが彼らの心を埋め尽くしていた。


