書庫に入り、あの本を探す。

前のような惹き付けられる感覚はなかった。

それが本の力なのか。


「あった…」


やっとのことでそれを見つけた。

これなら、助かる方法も見つかるかもしれない。

もっと皆のことを知らないといけない。

それに。


『弱い方が取り込まれるんだよ』


水無月の言葉。

信じたくはないが、守護者たちは完全に押されていた。

意を決して本を開いた。




が、


「何、してるんだよ」


意識が浮く寸前、手を掴まれた。

瞬時に元に戻る。


「皆…」


守護者たちがすぐ後ろに集まっていた。


「何でまたその本開いてんだよ」


結が鋭い目で露李を見つめる。


「皆のことを知って、理解するためです。私は…あまりにも知らなさすぎた、から」


「誰がそんなことをしてくれと頼んだ?」


翡翠の目が暗い光を宿している。

思わず拳に力を入れた。


「誰にも頼まれていません。私の意思です」


「何を知るんだ、これ以上」


「え…?」


「お前は花霞を封印する。俺たちはお前を守る。それ以外に何か必要なことでもあんのか」


分かっているはずでしょう、貴方なら。

そう言えたらどんなに良かっただろう。


「水無月さん達が言っていました。あの人たちは陰、先輩たちは陽の気を纏っていることも、どっちかが最終的
には取り込まれてしまうことも」


守護者たちが目を伏せた。


しかし、結の翡翠は露李を見据えたままだ。


「だから何だ?」


思わず顔を上げた。


「だから何だって…だってそしたら皆っ、」


恐怖だった。

初めて心を許せて、自分のことを受け入れてくれた人達がいなくなる。

大好きな皆がいなくなるなんて質の悪い冗談だと思いたかった。

自分のせいで皆の人生を無茶苦茶にしているのに、これ以上。

失うことがこんなに怖いのだと思い知った。

だから、決めたのだ。

私が死なせないと決めた。

そのために何か情報が欲しかった。


「最初に言わなかったか?俺達は全部受け入れてるし、覚悟もしてるって」


「言いました、でも皆が居なくなるなんて嫌なんです!」


結の瞳が揺れる。

自分勝手だと言われればそれまでと分かっていても、

それでも。

私は失いたくないんだ───。

耳元で大きな音がした。

結が露李の顔の横に手をついたのだと理解するのに数秒。


「そんなの、すぐに忘れる」


苦しそうな声だった。


「お前は、すぐに忘れるよ」


笑っていた。

悲しそうに、辛そうに。


「俺達は、道具だ。封印と風花姫の道具だよ」


「違うっ、貴方たちは…!」


「お前も封印も、全部命に代えても守る。だから、」


やめて、お願い。その先を、


「お前は俺達のことを理解しようとするな。───心の中に、入って来るな」





言わないで────。