【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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暗い暗い中に、露李は一人で立っていた。

どこなの、と声を出そうとしたが──出ない。

じわりと冷や汗をかいたそのときだった。


「霧氷様!なぜなのですか!」


女の声が闇に響き、突如として景色が広がった。

巫女装束と姫君の服が混ざりあったような、変わった服を着た女が、苦渋に満ちた表情で訴えている。


「花姫…」


視線の先には見目麗しい男。

水色とも翡翠とも、はたまた透明や白とも言えぬ不思議な美しい髪色をし、藍の煌めく瞳を持っている。


「なぜっ、なぜ…!あんな、恐ろしいことをっ!」


花姫と呼ばれた女は涙に頬を濡らしてなおも叫んだ。


「姫、戯言はそれまでに」


「世界の掟を破ってしまった貴方を、私はこの手で封印しなければならないっ!お願いですから、どうか嘘だと、間違いだと言って下さい!」


「間違いなど…どこにもない」


薄笑いを含んだ声に、姫の懇願の声が止んだ。


「霧氷様、貴方を信じていたのに」


最後の、期待。

花姫の感情が露李にどくどくと流れ込んできた。

失望、悲しみ、甘やかな希望、願い。


「あいつらと姫は同じではない、そろそろ分かれ」


しゅっ、という音と男の呻き声で女が矢を放ったのだと分かった。


倒れた男にすぐさま駆け寄り、花姫は涙を流した。

霧氷は彼女の頬を人差し指で拭う。

何かを呟き、彼は目を閉じた。


「施錠。この男の名を霧氷」


涙声でも機械的に唱える花姫。

弓矢が淡く光り、そこに男の魂が封じ込められた。


「花霞、頼みましたよ」


女が切なく笑う。