*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
暗い暗い中に、露李は一人で立っていた。
どこなの、と声を出そうとしたが──出ない。
じわりと冷や汗をかいたそのときだった。
「霧氷様!なぜなのですか!」
女の声が闇に響き、突如として景色が広がった。
巫女装束と姫君の服が混ざりあったような、変わった服を着た女が、苦渋に満ちた表情で訴えている。
「花姫…」
視線の先には見目麗しい男。
水色とも翡翠とも、はたまた透明や白とも言えぬ不思議な美しい髪色をし、藍の煌めく瞳を持っている。
「なぜっ、なぜ…!あんな、恐ろしいことをっ!」
花姫と呼ばれた女は涙に頬を濡らしてなおも叫んだ。
「姫、戯言はそれまでに」
「世界の掟を破ってしまった貴方を、私はこの手で封印しなければならないっ!お願いですから、どうか嘘だと、間違いだと言って下さい!」
「間違いなど…どこにもない」
薄笑いを含んだ声に、姫の懇願の声が止んだ。
「霧氷様、貴方を信じていたのに」
最後の、期待。
花姫の感情が露李にどくどくと流れ込んできた。
失望、悲しみ、甘やかな希望、願い。
「あいつらと姫は同じではない、そろそろ分かれ」
しゅっ、という音と男の呻き声で女が矢を放ったのだと分かった。
倒れた男にすぐさま駆け寄り、花姫は涙を流した。
霧氷は彼女の頬を人差し指で拭う。
何かを呟き、彼は目を閉じた。
「施錠。この男の名を霧氷」
涙声でも機械的に唱える花姫。
弓矢が淡く光り、そこに男の魂が封じ込められた。
「花霞、頼みましたよ」
女が切なく笑う。
暗い暗い中に、露李は一人で立っていた。
どこなの、と声を出そうとしたが──出ない。
じわりと冷や汗をかいたそのときだった。
「霧氷様!なぜなのですか!」
女の声が闇に響き、突如として景色が広がった。
巫女装束と姫君の服が混ざりあったような、変わった服を着た女が、苦渋に満ちた表情で訴えている。
「花姫…」
視線の先には見目麗しい男。
水色とも翡翠とも、はたまた透明や白とも言えぬ不思議な美しい髪色をし、藍の煌めく瞳を持っている。
「なぜっ、なぜ…!あんな、恐ろしいことをっ!」
花姫と呼ばれた女は涙に頬を濡らしてなおも叫んだ。
「姫、戯言はそれまでに」
「世界の掟を破ってしまった貴方を、私はこの手で封印しなければならないっ!お願いですから、どうか嘘だと、間違いだと言って下さい!」
「間違いなど…どこにもない」
薄笑いを含んだ声に、姫の懇願の声が止んだ。
「霧氷様、貴方を信じていたのに」
最後の、期待。
花姫の感情が露李にどくどくと流れ込んできた。
失望、悲しみ、甘やかな希望、願い。
「あいつらと姫は同じではない、そろそろ分かれ」
しゅっ、という音と男の呻き声で女が矢を放ったのだと分かった。
倒れた男にすぐさま駆け寄り、花姫は涙を流した。
霧氷は彼女の頬を人差し指で拭う。
何かを呟き、彼は目を閉じた。
「施錠。この男の名を霧氷」
涙声でも機械的に唱える花姫。
弓矢が淡く光り、そこに男の魂が封じ込められた。
「花霞、頼みましたよ」
女が切なく笑う。


