【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく


森を駆け抜け、ようやく神社についた。


「露李さまっ!お怪我は!?」


海松がすぐに出てきて、涙でグシャグシャの露李を支え
る。


「皆が、皆が……!!」


海松は辛そうに顔を歪めた。


「分かっています。今は早く中に入りましょう」


水を飲まされ、露李の部屋へ連れていかれた。

文机の前に座らせ海松自身は三歩下がった所に腰を下ろす。



呆然としていた露李が突然立ち上がった。


「どうされましたか、露李さま」

長い髪が顔を覆って表情を窺うことができない。

得体の知れない不安が胸を満たす。


「ご飯と、生姜湯作らなきゃ」


露李が顔を上げた。

ポロポロと涙が頬を伝い、目が真っ赤でも笑っていた。


「皆、お腹空かせて帰って来るから沢山作らなきゃ。結先輩も絶対っ…声、ガラガラだし」


嗚咽が喉を占領しようとするが、露李はごしごしと目を擦って台所へ向かった。

私が泣いちゃいけない。

今一番辛くて痛いのは皆だから。

守られた私は、せめてその皆のためにできることを。


「露李さま、急ぎましょう。皆さんがお帰りになる前に作らなければ」


海松が優しく笑って露李の横に並んだ。


「ありがとう、海松ちゃん」


幼馴染みの海松だって、いや海松の方が辛いはずなのに。


*****

「できた!!」

二人で畳に座り込んだ。

食卓にはご馳走が並んでいる。


すき焼きに天ぷら、肉じゃがにしょうが焼きに筑前煮に卵焼き、手羽先とししとうの煮付け、おすましに味噌汁に豚カツにコロッケ、海老フライに海鮮サラダに野菜サラダ、艶やかな白米から炊き込み、赤飯まで。


デザートには羊羹や柑橘のゼリー、あんみつに泡雪羮、プリン。


まとまりのないメニューでも、皆が好きなものを作った。


一気にすることがなくなり、今まで聞かないようにしてきた音がどっと耳に入ってくる。

森からはひっきりなしに光が発射されている。

とっくの昔に日付が変わっていたというのに、まだ戦い続けていると思うと恐ろしかった。


「こんなに、長時間…」
 

思わず呟くと、海松が想いを汲んだように答えた。


「あの方たちはヒトとは少し違います。ヒトの感覚では有り得ませんが、それ以外にとっては普通なのですよ」


だから大丈夫です、と言おうとした刹那。


光と音が消えた。

辺りがまた闇に染まる。
 

「終わった…?」


そう言うや否や、露李は外へ飛び出した。 


「露李様!!お待ちください!!」


「行かせて、私っ…約束したの!!」


それだけを告げて森へ走り出した。


皆と、約束したから。

必ず帰って来るって。

もう終わったんだ、大丈夫だ。

みんなきっと笑顔で─────。





「………え?」



足が、止まった。


参道を表す石畳の上に転がる、五体の人形。


それは大好きな、あの人たちに酷似していて。

美しいほどに赤い花に、染まっていて。


こんなの、違う。


あの人たちじゃない。

あの人たちが、負けるわけないのに──。