【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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「露李ー!早くしないと置いてくぞー!」


秋も過ぎ、寒さが目立つ十一月半ば。


「はい、待ってくださーい!」


教室の扉の前で呼びかける結に叫び返す。

しかし、まだ振り返れない。

机の整理をしているフリをしながら露李は左手で頬をつねった。

いやが上にもしかめてしまう顔をどうにかしたいのだが、やはりどうにもならない。

あの日から襲撃は無かったが露李は度々頭痛に襲われるようになった。

ただの片頭痛などではない。

あの本に触れたときと同じ声が囁くのだ。


『全てを知らなければ』


全てを知るって何。

露李は心の中で問いかけた。

けして返事が返ってきたことはないのだが。


「あー…」

やっと痛みが治まった。

もうこれ以上誤魔化せなさそうだったので一安心だ。


「ふぉーい、ふぁだふぁー」


フゴフゴした結の声が後ろから聞こえてきた。


「何があったらそんなファラファラしたしゃべり方になるんですか」

露李は頬を弛めながら振り向いた。

どこから出したのか、焼きそばパンを頬張っている。


元から整った顔立ちをしているために、リスのように膨れた頬が愛くるしさを際立たせている。


「お待たせしました」


結はゴクンと飲み込んでからにかっと笑った。


「おせーよ。俺は世にも稀な退屈さを味わったぞ!」


「その割には幸せそうですけど。焼きそばパン、お好きなんですか?」


「おう!購買で一番旨いと思う!」

結は自信たっぷりに宣言してから、まあ海松の焼きそばには負けるけどな、と締め括った。


「何言ってるんですか、購買のクリームパンが絶品ですよ」


「いや、焼きそばパンだ!」


「いいえクリームパンです!」


「俺は中等部からここにいるぞ!」


ぐっと詰まるが、露李も負けられない。


「味覚と経歴は違いますー!」


「何だとー!」


「あーもうまた争ってるの?元気だよね全く」


二人の背後から冷気を感じた。


「何してるのかな?結が呼んでくるーって勇んでいったかと思ったらやたら長いし。俺が中庭で待ってた時間計算する?」


「いや、あの…」


笑顔なのに怖い。


結は顔をひきつらせて後退した。