六人が出て行ったのを確認すると、未琴は素早く室内に結界を張った。
ぴんとはりつめた空気が漂う。
「露李。貴女はまた、雹雷鬼を出したのですね?」
「…はい」
*****
初めて出したのは十歳の頃だ。
一族の視線に耐えきれず飛び出したところ、森に迷い込んでしまった。
その時出会った妖。
明らかに正気を失い、目を血走らせ、血を欲していた。
掴みかかられ腕を切り裂かれ本格的に喰われそうになった刹那、頭に言葉が浮かんだ。
それが露李の中に潜む刀──雹雷鬼の名前だった。
恐怖のあまり胸から出たそれを無我夢中で振り回し、気づいたときには妖を斬り殺した後だった。
目の前のおぞましい光景に言葉を失った。
『う、そ…』
刀は金銀の光を放ち血糊一つ付いていないのに、自分の周りに血溜まりが広がっている。
さらりと髪が肩から落ち、露李の視界に入った。
いつもの艶のある栗色ではなく月光のような銀色だ。
次に血溜まりに映る自分の姿を見て絶句した。
赤の中に光る金。
それは自分の目があるべき場所にあり。
『露李さまー!!どちらに…え?』
お付きの使用人が露李の姿を見た瞬間に震え出した。
『ばっ、化け物!』
『桜木、違うわ。私です、露李です』
『触らないでっ!』
ぱしんと振り払われた手。
───今でも鮮明に、覚えている。
葵の声に気がついた使用人たちが集まってきた。
露李を中心に広がる動揺と、侮蔑。
叫び声や視線──。
『このっ…』
一族の者たちが手に光の球を造り出した。
『やめて、私はっ…』
力を持たない露李に身を守る術はない。
一族の者が総出で一人を攻撃すれば、ただごとでは済まない。
『嫌…』
怯えた目で見つめられても、情の一つも湧かない。
彼等にとってそこにいる金色の瞳をし銀の髪を持つ少女は倒すべき化け物でしかなかった。
露李の目に映ったのは、敵意を剥き出しにした見慣れた者たちと無数の光だけだった。
次に目を覚ましたのは、暗い蔵の中だった。
『痛…』
反射のように呟いた言葉が虚しく響いた。
ジャラ、と鎖が鳴る音がして、露李は手首を見た。
音と痛みの原因はそれだと一瞬で悟った。
手錠などと良いものではなく、ただの鎖を何らかの術できつく結んであるものだ。
屋根から垂らしたそれは解けそうにもない。
『目覚めましたね』
蔵の戸が開き、光が差し込んでくる。


