「え、いや、私、実はこの前盗み聞きしちゃったの」


苦し紛れの嘘。


だって、族のそんな大切な話を、誰かに聞こえる場所でするはずがない。


「僕達の話を?」


「うん」


お願い!これでなんとか通って!


そう祈るしかなかった。


「え、でも僕達は…」


「わかった。俺達のミスだ」


亮太が何か言いかけたけど翔がそれを制した。


「ごめんね」


「でも翔!」


「いい」


明らかに亮太が何か言いたそうだけど、ここで何か言われたら私にとってもまずい気がする。


「じゃあ学校行こうよ!」


空気を変えるようにパンっと手を叩いた。


これ以上聞かれたらボロが出そうで怖い。


それに、まだ喧嘩したことについては何も聞かれてない。


それについては弁護のしようがないから絶対に聞かないでほしい。


私は2人と目を合わせないようにして、車に乗り学校へ向かった。