桜side

「山村さん、お待たせしました!」


そう言いながら車のドアを開け放つ。


私の声が聞こえると、山村さんは耳にしていたイヤホンを外した。


「お疲れ様。少し時間おしてるからとばすわね?」


心なしか楽しそうな表情でハンドルを握っている。


「………はい。」


本当はやめてほしいけど、時間を遅れさせたのは私だから文句は言えない。


なんて言ったって山村さんのとばし方は尋常じゃないんだよね…。


まるで映画に出てくるカーレースみたいなの…。


あ、山村さんってのは私の専属マネージャーさんのこと!


私のスケジュール管理や送迎なんかをしてくれるている。


今日は私が居眠りして時間を忘れてたんだし、何も文句は言えないや…。


仕方ない。


死ぬ覚悟をした上で車に乗り込んだ。


「いっくわよー!」


元気な掛け声と共にエンジンがかかり、急に車が動き出す。


「わっ!ちょ、いきなりとばしすぎーー!」