すると、後ろからいきなり玲音が抱きついてきて息が止まりそうになった。


「り~り~ちゃん♪
深刻な顔してどうしたの?」



「ちょ、ホントにやめてっ!!苦しいってば!!」


「本当は嬉しいくせに~♪」


そう言って、私の正面にまわった玲音が目を丸くして驚いた。


「わわっ、ごめん、りりちゃんっ!

マジで苦しかったんだ。顔、真っ赤!」


そんな玲音に力なく拳をふるうので精一杯…



「あ……」


沙耶ちゃんがロッカーから体操服を取り出しているのを見て気がついた。


「どうしたの?」


「ぼーっとしてて、ジャージ家に忘れてきちゃった。3時間目、体育だよね?」


「じゃ、見学?」


「そうしようかな」



すると、それを聞いた玲音が笑顔になった。


「りりちゃん、俺のジャージ貸してあげるよ。

俺、部活用のジャージあるから」



「ありがと。でも今日は見学しちゃう」


「なんで?いつも俺のパーカーとか勝手に着てるじゃん?」


「だって、玲音のジャージ、汗くさそうだし」


「俺は汗すらも爽やかだよ?」


…そんなの知ってる。

玲音は汗かいててもなんだかいい匂いがする。



ただ、他の女の子が着ていたジャージだと思うと


ちょっとだけ抵抗がある。


なにより、こんなことを気にしている自分が、なんだかすごくいやだ。