「りりちゃん、今すぐキスしたい」
「……へ?」
そう言って、いきなり顔をちかづけてきた玲音に迷わず往復ビンタ。
頬を赤く腫らしながら、なお顔を近づけてきた玲音に
悲願の踵落としを決めようと踵を振り上げたところで、
遠山くんが青ざめながら呟いた。
「よ、吉川、や、やっぱり今日はいいや。ま、また、今度な?」
「ほへ?」
私を見て怯えたように後ずさりながら自分の教室に戻っていった遠山くんに首をひねった。
「遠山くん、なんの用だったんだろう?」
「さあね?別に用なんてなかったんじゃない?
それより、もうすぐ授業はじまるよ?」
そう言ってにっこり笑った玲音のネクタイをつかんで、
周りに聞こえないように玲音の耳元に口を寄せた。
「……っていうか、学校の廊下でキスとか、信じられないっ!!
なに考えてるの?!」
「じゃ、部屋に帰ってからならいいの?」
「んなわけないでしょうがっ!!」
懲りずにヘラヘラ笑っている玲音の背中をドスドスと蹴飛ばしていると、
廊下の向こうで遠山くんが怯えたように私のことを見つめていた。
はあぁ……



