「もうバカァーー!!だったら握手でいいでしょう!!?」


「アハハハハッ!…はいはい。そんじゃ、早く泳ごうぜ。足元滑らねぇように気を付けなくちゃな?」


むぅ!!


絶対私で遊んでるっ!!!


頬を膨らませて霧島くんを敢えて睨むけど、彼は私のそんな視線もなんのその!


悪戯をした子供のように無邪気な笑顔を私に向けると先にプールへと近づいて行った。



その時、霧島くんの背を目で追いながら私はふと思うことがあった。




…霧島くんはきっと、


お付き合いの経験とかいっぱいあるから余裕があるのかもしれない。



けれど私は……、



心の余裕なんて一度だって感じたことはないよ…?




本当は彼にこのことを言いたい。


でもそんなことは言えない。



だってこれは私の寂しい身勝手な言い分だから彼に伝えたくなかった……。




本当に“あの時”とは違う。


あの図書館でのデートとはまるで違うよ。



私、霧島くんのこと好きすぎて、


たまにどう接すればいいのかわからなくなるときがあるもの…。



「どうすれば、もっと近づけるのかな……。」


ため息混じりにも似た呟きが私から暑い空気へと溶けていった……、



そんな時だった。





《ちょっとぉーーー!!そこのムキムキマッチョ集団ッ!!!“飛び込むなっ!”ってさっきから何回も注意してんのが、わっかんないのかしらねっ?!!
今度飛び込みやがったら、月にかわってお仕置きよッッ!!!》




…………………。




…………。




……ん!?




この声、どこかで聞き覚えがあるような…??



すると霧島くんがある一点を見たままピタリと止まって動かなくなってしまった!