「き、霧島くん!私はべつに物乞いをしているのではなくて、ちょっと懐かしくて見てただけで、」


「懐かしいんなら余計それで遊ばねぇと後悔するぞ?」



うっ…。




本当に隙が無いんだよね、霧島くんって…。



「とにかく、俺も興味がわいてきた。咲希が選んでよ、好きなヤツ。」



これはもう、どう言っても引いてはくれないよね…?!



覚悟を決めた私は口ごもりながら遠慮がちにひとつの浮き輪を指定した。



「えっと………。そ、それじゃあ、あの青いイルカが、」


「あおいイルカにするよ、ママ!!」




………え!?



隣を見るとさっきお母さんにねだっていた男の子が目を輝かせて私の選んだイルカの浮き輪を跳びはねながら指さしていたっ!!



しまった!!かぶっちゃった!




「あおいイルカがいい!!」



するとお母さんの注意の声がとぶ。


「こら!順番を守りなさい!!あっちのお姉ちゃんの方が先でしょ!?」


「う~…。」




まずい!!子供の夢を奪ってしまうっ!!!



そう直感した私はすぐに言葉をのせた!



「の、隣にあるタコ!!!あの赤いタコがいいです、霧島くんッッ!!!!」



「え!?タコ?」





シーーーン




うっ!!




ちょっと無理やりすぎたかな…?




そう思われても仕方ない。



だって、私が選んだタコは他の動物と違ってかなり不細工な作りをしていた…。




と、そこへヤスさんが気を利かせてくれて、



「じゃあ、そこのボーズにはイルカで、こっちのお姉ちゃんには赤いタコだな!いま取ってやるから待っててな?」


と男の子に笑いかけるとサングラスをして梯子を取りに行ってしまった。




「あの、本当にいいんですか?」


と大はしゃぎしている男の子のお母さんが私に申し訳なさそうに尋ねてきた!