「まぁ、今は周りに人がいるから許してやるけど、次は容赦しないからな?」


「へ……?」



すぐに目を開けるとそこにはふっと余裕ある笑みをこぼす彼がいた!




んなっ!?



まさか今のって!!!



「じょ、じょ、冗談だったの?!!」


動揺を隠しきれず、霧島くんから振り切るように二、三歩後ろに下がる!!



「何が?俺はいつも本気だけど?」



霧島くん……



そうは言っているけど、




今思いっきり笑ってるよね!?



体は正面を向いているけど顔は横向きで、口に手を当ててはいるけど吹き出して笑っているのが私からは丸見えの状態だった。




「~~もう!!霧島くんのアンポンタンッッ!!!知らないんだから!」


「ハハッ!悪かったよ、咲希。ごめんな?でも先に仕掛けてきたのは咲希だから、これくらい許して?」


「し、仕掛けた!?なんて別にこっちは何もしてないんですからね!ふん!」



と、首が鳴るくらいに霧島くんとは真逆の方を向くと頬を膨らませて下を向いた。





「………結局、こんなにもドキドキしているのは私ばっかりなんだよね。きっと…。」


霧島くんには決して届かない、かすれる声でぽつりとそう呟いた。



それが悔しいやら、悲しいやら。



真夏の恋する乙女の心情はとても複雑に絡まっていたのだった。