「つーかヤスこそ空気読めよ!さっさと鼻かんで昼寝しに行けって!」


「ハイハイ。落ち着けって。悪かったよ!まぁ、でも屋上は先客がわんさか居るみてぇだから、お邪魔虫は別の場所を探すとすっかな?ハハハ!」



そう笑いながらヤスさんは言うと、かかとの潰れた上履きを引きずりながら屋上を後にしたのだった。



「…ったく。やっぱりわかってて邪魔しやがったな、ヤスの奴。」


「…………。」


「だいたい見世物じゃねぇのに隠れて見てんなよ。」


「…………。」


「ん?咲希?どうした?」


「……ひ、」


「咲希?」


「ひょええぇぇぇぇぇ!!!!」


「っ!?オ、オイ!!咲希っ!??」


「ぎゃああぁぁぁぁーー……」


気づくと私は霧島くんをその場に残して一気に階段を駆け下りていき、すぐさま学校を後にしたのだった…。


それほどこの時の私は、正気を失ってしまっていたのだ。







咲希が悲鳴をあげて理人の元から走り去っていくと、二枚の紙吹雪が理人の視界に舞った。


咲希のことを追いかけたい衝動にかられた理人だったが、二枚の紙吹雪がそれを引きとめる。


足先は咲希の方へ向かい、手元はその謎の紙へ…。



「コレ、咲希が持ってたもの……か?」


理人は咲希が何かを隠し持っていたことに気付いていた。


拾上げたその“落とし物”に目をやると……?



「アクア…ランド…?」


理人にとってはまさかの展開だった。








夜、自宅にて――



私はバイトから帰宅するとそのままのろのろと自室に入った。


「はぁ~~~。」


そしてベッドにダイブをすると今日の反省会を一人寂しく開く…。


「なんで逃げちゃったかな…。恥ずかしいからって意気地なしだよね、私…。」



結局、霧島くんに何も言えずに帰ってきてしまった。


あんなに決意して臨んだのに…。


本当に何をやっているんだろう。


「霧島くんがプールに興味なくても、いまこうして後悔するくらいなら…ちゃんと誘えばよかった……っ!」


涙が滲んできて情けない声が部屋に響く…。



大好きな彼と過ごしたい!


最初はただそれだけだったのに…。