砂漠の賢者 The Best BondS-3

*
 一年半ぶりに会った男は、まるで変わっていなかった。
 たった一年半で何が変わるのだと言われればそれもそうだが、剣士という生業を持つ者に突然の変化というのは、そう珍しくないものなのである。
 ハセイゼン邸から侵入者を知らせる信号が入り、数ある監視カメラから送られてきた画像を見た時は本当に驚いたのだ。
 かつて冬空の剣士と呼んだ者がそこには映っていたのだから。
 信じられぬ思いで屋敷へと足を向けた。
 会いたいような、会いたくないような、なんとも不思議な気持ちだった。
 侵入者と警備隊長としての邂逅は余りに皮肉だ。

「まさか盗人になっているとは思わなかった」

 ティンクトニアは余り抑揚の無い声で淡々と告げて相手の――ゼルの剣を弾いた。
 キン、と心地好い音が周囲に散る。

「だから違うっつってんだろーが!」

 力一杯否定するゼルを無視し、弾いたままの力を利用して腹を狙う。
 だがそれは受け止められ、そのまま円を描くように動かされた剣でやはり最終的には弾かれた。
 ティンクトニアは己の中に流れる猛る血を抑えようともせずに、ふ、と笑う。

「対刀用の訓練をしたと見える」

「いつかまたアンタと剣を交える為になっ!」

 二つの刃が交わり、押し合う。
 ぎぎ、と刀がせめぎあう声をあげた。
 目の前には爛々と燃える冬空色の瞳。

――変わっていない。

 ティンクトニアは率直にそう思った。
 真っ直ぐに己の正義を信じる強い目だ。
 剣に使われることもなく、斬った斬られたの世界で誰かを憎むこともなく。
 そこまで考え、ふと気付く。

「そうか、エディだったな」

 憎しみを持つ者は鞘から抜くことさえ許されぬ人喰いの剣だ。
 それを振るうこの男が変わる筈もない。
 ティンクトニアの独り言にゼルが眉を動かした。

「それが、どーした」
「……いや、別に。嬉しいなと思っただけだ」

 限界まで押し合う。
 相手の息遣いまで感じられる距離。

「アンタは剣士になったんだな?」

 今度はティンクトニアが眉を寄せる。