「ティンク」
一度は剣によって心通わせた相手だ。
ただ名を呼んだだけで言いたいことは伝わってしまったらしい。
「冬空の剣士……いや、今はエディの剣士と呼ばれていたな。ゼル、これは私の仕事であり、正義なのだ。刀を抜いた以上、私は引かん。わかるだろう?」
紫紺の瞳はとても静かにゼルを見据えた。
ゼルはそれを見て避けられぬ勝負だと知る。
「私もお前も剣士の端くれ。勝負は一騎討ちだ。皆も手を出すでないぞ」
手を出せと言われても困る男達はその言葉にいそいそと引き下がった。
ゼルは正面に剣を構える。
「相変わらず、素直な構えだ」
ティンクトニアは笑んだ。
その美しい笑みにも闘志は宿る。
――時間が惜しいっつーのによ!
三十余名が見守る中で、かつての勝負に決着をつけるべく、心中で毒づきながらゼルは一歩を踏み出した。
「アンタも相変わらず隙のねェ嫌味な構えだなっ!」
刃が合わさる。
今は、目の前の戦いに集中せねばならない。
相手の力量をひしひしと感じつつも、ゼルはふと心の片隅でエナを想った。

