砂漠の賢者 The Best BondS-3

 黒い詰襟に金の刺繍が入った制服。
 形は他の男達と同じなれど、明らかに特注品だ。

「アンタは? 元気してンのかよ?」

 女の服装を検分する以上、どう考えても、この男達を統率する者のそれだった。

「お陰様でな、この通りだ」

 女は両手を軽く広げてそう言うと、肩を竦めた。

「して、お前は此処で何をしている。凄腕の剣士が泥棒か?」

 過去にも似たようなことを言われたな、とゼルは溜め息を吐いた。
 エナと出会ってから向こう、泥棒呼ばわりが増えた。
 このままでは剣士としてではなく、盗人として名をあげる日も近そうだ。

「おいそりゃ嫌味か? オレがまだ剣士じゃねェのはアンタが一番知ってンだろ、ティンク」

 一年半前。
 剣士としての資格を得るべく参加した剣技大会。
 そこで出会ったのが今目の前に居る女、ティンクトニア、通称ティンク。
 ゼルがその大会を途中棄権したことも、その理由も知っている唯一の女だ。

「なに、私の中ではお前は剣士なのだ。だからこうして侵入者のお前に斬りかかることなく話をしているわけだが?」

 だから先程の問いに答えろ、と紺の瞳を紫に光らせて女は促す。

「オレは盗まれたモンを取り返しに来ただけだ。邪魔すんじゃねェよ」

 過去に剣を交えた時、その力はほぼ互角だった。
 再戦をしたいとは思うが、出来れば今は避けたいのが本音だ。
 先程までのんびり歩いていた時ならばともかく、こんな男達が急に湧いて出たのだから、丸腰に近いエナが心配だ。
 まあ、男達が湧いて出たからこそ、ティンクトニアが目の前に居るわけなのだが。

「盗まれた物? この屋敷の主が物を盗むとは到底思えんが」

「だァら、盗まれたモンが此処に持ち込まれて! つーか色々事情があンだよ。ンなトコで時間食ってる場合じゃねェんだよ、オレは!」

 ティンクトニアは短く息を吐いた。

「盗まれた物でも主が買った物ならば、やはり盗人ではないか……。剣士の魂も地に墜ちたな」

 そしてティンクトニアは腰に帯びていた得物を抜いた。
 他の男達と違い、ティンクトニアの手には薄く鍛え上げられた片刃が美しく反る刀。