「そ。いくら行動共にするって言ってもさ、それぞれの時間、大事にしたいし、して欲しい。これから宿も一部屋にするんだし、四六時中べったりなんて、不自然じゃない?」
宿が一部屋になったのは、航海中エナが夜這いにあいかけたからだ。
勿論、そんな輩はエナ自らが叩き出してやったわけだが、わざとらしく激昂したジストをたしなめるのに苦労したゼルが言い出し、エナとしても夜這いが普通の男ならばなんとかなるがジストもその範疇に入っているとなれば、真剣に身の危険を感じその提案を飲んだのである。
そうなれば、各自の自由な時間というのは皆無に近い。
「えー。ジストさんはエナちゃんと四六時中一緒がいいなー。なんならお風呂もトイレだって一緒でもいいのに」
自由時間を与えられた瞬間フラフラと姿を消すに決まっている男の発言をエナはさらりと無視してみせた。
「まあ、確かに…買い物にしてもなんにしても、一人の方が効率イイってのもあるしな」
「そゆこと。じゃ、船着場の時計台の下に……五時で。ジスト、宿は頼むね」
宿の値段交渉は主にジストの役目だ。相手が女性だった場合、大概の確率で成功する。
はいはーい、と二つ返事をしたジストは煙草を灰皿に押し付けた。
かくして、三人はそれぞれの自由時間を満喫すべく、賑やかな大通りへと身を滑り込ませたのである。
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