砂漠の賢者 The Best BondS-3


 この男は何故こんな言葉を穏やかに優しく口に出来るのだろうか。
 心配以上の何かがその声には多分に含まれていた。

「……揃いも揃って大袈裟だねぇ」

 二人とも、これ以上ないほどにエナのことを気にかけている。
 それは痛いほどよくわかった。

「そう思ってたきゃ、エナとはコレ以上関わんねェ方がイイよな」
「あー……だな」

 苦笑する二人の脳内を覗くことは出来ないが、誤魔化しているようにも見えなかったので、それ以上のことには口を噤む。

「まあそうだね、どうしても上に行きたいなら、中流層のボージュって店に行ってみたらどうだい。そういう情報はそこの女達の方がよっぽど詳しい筈さ」

 店の名前にジストの目が輝く。
 どんな店なのか知っているのだろう。

「ああそっか。ジストさんたらすっかり忘れてたな。よし、ゼル行くぞ」

 その店には上流貴族も出入りしている。
 運良く会えれば、もしかしたら上にいく算段をつけられるかもしれない。
 結局、この街での法則は上流貴族なのだ。

「は? エナに会うのが先じゃねェの?」

 ゼルはげんなり、といった体で恨めがましい目をジストに向けた。

「待ってても仕方ないからね。上に行けなきゃ会ったところで同じことだ」

 どうあっても上流貴族の住まう土地に足を踏み入れたいようだ。
 何を言っても無駄なのだろうとヴィルマは説得を諦めた。

「アンタら一体上で何しようってんだい……ま、いいけどね。エナにはアンタらが訪ねてきたこと伝えておくよ」

 身を翻す二人に言葉をかける。

「くれぐれも無茶すンなって言っといてくれな」

「あと、オネーサン達に迷惑かけないように、ってね」

 ゼルもジストも半身だけをこちらに向けて軽く手を振った。
 ヴィルマは腰に手をあてて、息を吐く。

「それをアタシの口から言えってのかい。いいんだよ、あの子とは同じ釜の飯を食ったんだ。迷惑の一つや二つなんでも無いさ」

 エナは旅仲間の犬が連れ去られたのを追ってきたと言っていた。
 相手は男といえど一人。
 それなりに腕に自信がある集まりのアルタイル一座だ。
 エナに危険が及ぶとは考えにくいことではあったが。

「本気で愛されて、羨ましい限りだねぇ」

 二人の背中を見送りながらヴィルマは空へと呟いた。