砂漠の賢者 The Best BondS-3

 ジストは相変わらず笑顔のままだ。見ようによっては胡散臭い。

「ゼルくんは照れてるんだよ。エナちゃんに仲間って言われて嬉しいくせにまだ戸惑ってるんだ」

「悪いね、アンタには聞いてないんだよ、アタシは。どうなんだい、ゼル」

 寝ていても嘘がつけそうな男の答えなど信じられるものか。
 一度でも舞台を共に作り上げた以上、エナはもう家族のような存在だ。
 妹のような――年齢的には母子だが――エナを何処の馬の骨とも知れぬ男に易々と渡すわけにはいかない。

「どう…って言われても」

 ゼルはこめかみを掻いた。

「旅の道連れってゆーか……や、何かピンと来ねーな。でもよ、な、仲、間とか…どういうモンかわかんねェし……」

 しばらく何かを考えていたようだが、ゼルは急に文字通り、頭を抱えた。

「………だぁぁっ! 何でオレがこんなに困らなきゃならねンだよ! そもそも一人で飛び出してったあいつが悪ィんだろが! エナに会わせろ! 一発殴らせろォ!」

 鉄扇でー! と喚くゼルを見て、ヴィルマは溜め息を吐いた。

「……成る程。信じよう」
「へ?」

 素っ頓狂な声に思わず笑いそうになる。
 ここまで馬鹿正直な男はこのご時世なかなか居ない。
 頭を抱えて悩み喚き詰るゼルの言葉に感じた“相手を案じる気持ち”。
 それは紛れも無くエナに向けられているのだ。
 疑うべくもない。

「エナは愛されているんだねぇ」
「あ、愛?! いや……」

 狼狽するゼルを優しい目で見つめる。

「だってそうだろ? 心配してたのに、元気に舞なんて踊ってたんで腹がたったんじゃないのかい」
「違ェよ!! 放っておいたら死人が出そうだからで!!」

 エナは確かに女性とは思えない身体能力を持っているが、明るくてかわいらしい普通の女の子だ。
 死人が出るなど大袈裟過ぎて笑ってしまう。

「あの子にそんなこと出来やしないよ、何言ってんだい。嘘はつけないのに素直じゃないのかい。温かい家庭で育った長男ってところだね」

 喉に空気でも引っ掛けたのか、ゼルが咳込んだ。
 本当に何処までわかりやすいのだろうか。