砂漠の賢者 The Best BondS-3


「……へぇ、こりゃあ色男だな」
 オネーサン、アルタ座の人? と声をかけられて振り返ったのはヴィルマで、振り返るなり驚嘆の声をあげた。
 目が覚めるどころか、気を失いそうな美貌の持ち主が、好意的な笑顔で立っているのだから。
 眩暈を起こしそうだ。

「…ああ、入団希望かい? あんたみたいな色男なら大歓迎だよ。おや、こっちの兄ちゃんもなかなか……。それに随分イイ体してるねぇ、武術の心得でもあるのかい」

 無遠慮且不躾で此処まではい上がってきたヴィルマは遠慮会釈なく短髪の男の胸板を触った。
 このような弾力のある筋肉は一朝一夕で出来るようなものではない。
 きっと相当なトレーニングをしてきたのだろうし、今でも毎日欠かさず訓練しているに違いない。

「あ、いや……オレは剣士で、別に入団希望ってんじゃなくて……」

 短髪の男はしどろもどろと答えた。
 どうやら押しの強い女を苦手としているようだ。
 ヴィルマはにやりと笑う。

「なんだ違うのかい。そんなこと言わずにさぁ、どうだい、一度演(ヤ)ってみないかい? 剣舞なんてどうだ、アンタにゃぴったりだろ。アンタ、名前は?」

「あ……ゼル……じゃねェや、そーゆーんじゃねぇんだってば」

 うっかりゼルと名乗った男の頭を、美青年はぺしりと叩いた。

「お前はどうしてそう単純なんだ」
「いやぁ、結構なことじゃないか。アタシは好きだよ、素直な男。そっちの色男サンも好みなんだけどねえ」

 流し目を送ると美青年はにこにこしながらヴィルマの手を取った。

「あ、僕ねジストって言うのー。オネーサン、美人だね」
「くぉらっっ! 人のコト言えねぇだろが!」

 ジストの後頭部に張扇(ハリセン)が振り下ろされた。

「おま…、なんでそんな物持ってるんだ…」

 元が紙なのでそれほど痛くもなかっただろうに、ジストは大仰に頭を摩った。

「港町…カダルで買ったんだよ。素手で突っ込むとカウンター繰り出すだろ、アンタ。…やっぱ鉄扇にすりゃ良かったかも」

 どんな会話だ、とヴィルマは呆れた。