砂漠の賢者 The Best BondS-3

 「……エナ、だな」

 そこらの女とは違う。
 そこらの人間とは違う。
 行動の規格、器の規格。
 否、理不尽な程の悪運と破天荒な生き方。

 「…だろう? 大人しくしてるかどうか、お前のその空っぽの頭でも…」

 「ああ、わかるよ! わかりすぎるくれぇだ! でもよ…」

 何か言い募ろうとしている。

 ラフを助けさえすりゃ、エナがアルタ座として出演しよーが問題ねェじゃねぇか、エナもそこまで問題起こしたりしねェって。
 つーかそもそも、ノービルティアに入ってからアルタ座と別行動かもしれねっし!
 そんなあたりだろう。
 聞くのも面倒で、ジストは会話のイニシアチブをしっかりと握り直した。

 「上流階級の貴族に動物マニアが居るんだよねー。それも遺伝子操作で生まれたような奇妙な生き物ばーっかり。あの犬コロも、見る人から見りゃあ奇妙に見えるかもなぁ」

 「誰が見ても奇妙だろ!」

 犬の風体で猫の鳴き声。
 最初は誰もが驚くだろう。
 エナだけはどうだったか知らないが。

 「その貴族なんだよね、アルタ座呼びつけたの。やだよねぇ、獣狂いの上に女狂いらしーよ? そんなけ狂ってりゃ性癖もさぞかしご立派なんだろね?」

 向かいに座るゼルが瞠目するのがわかった。

 「それって…それって……!」

 みるみる内に青ざめていく。

 「犬コロがそこに居たとしてー、エナちゃんがお金でカタつけるとか考えてくれればいいんだけどね」

 「んなワケねーだろ! もともと仲間なのになんで金が必要なんだ、むしろ金払えとか言うよーな奴だぞ?!」

 エナならばそう言うだろう。
 だが実際にラフにナイフでも向けられようものなら全財産でも差し出す。だから、厄介なのだ。