砂漠の賢者 The Best BondS-3

 「わぁーったよ。で? どんなトコだよ」

 「金と情報の街。見てくれだけの、薄汚いブタと浅ましいメスの飼育小屋ってトコか」

 エナが聞けば顔を顰るに違いない言葉をゼルは平然と受け止めた。
 こういう時、男同士は楽で良い。

 「そらわかりやすい説明だこって」

 半眼を伏せ、ジストは煙草をくゆらせた。
 肺に煙が染み渡る。

 「そのくせ、格差だけはつけたいらしくてな。上流階級の貴族でも相当なコネが無いと行けない場所なんてもんがあったりするわけ。こんなことになるなら恩売っとくべきだったな」

 話の雲行きが怪しくなってきたことに、ゼルは気付いているだろうか。
 いや、気付いていない。
 無知は無恥に通ずる。
 無恥は根拠のない強さを与える。
 ゼルはそうであるべきだ。
 退屈知らずの生活を送る為にゼルにはそうであってほしい。

 「中流階級に留まってくれてりゃいいんだが………まぁ無理な注文だな」

 「…? 別にエナがそこに行くっつーワケでもねンだろ? ラフを助け出したらそれでイイんだ」

 馬車の中に紫煙が溜まる。
 口の中にピリピリとした刺激が残る。
 目の中に無知な男の双眸が映り込む。
 逸らす。
 口の端が吊り上がる。
 煙草を吸う振りをしてそれを手で隠した。

 「……お前、大事なこと忘れてねえか」

 きっとゼルは片眉を寄せているだろう。

 「あれは、誰だ?」

 沈黙が流れる。
 息を飲む気配。