「……まぁ、ノービルティアに入ればすぐにエナちゃんの居所がわかるのが幸いか……」
「街に入ってもエナがまだアルタ座と行動を共にしてたらな」
「嫌な話持ち出すんじゃねぇよ」
舌打ちを添えた言葉には、どこか諦めの色が混じる。
エナとの再会がまだ先のことになると、ジストは薄々感じていたのだ。
「なぁジスト。ノービルティアってェのは、一体どんなトコよ」
「知らねぇのか」
ゼルは、知ってたらアンタなんかに聞くかよ、とそっぽを向いた。
「護衛の仕事で一回行ったことあるんだけどよ、一日で解雇されちまって街から追ン出されたからな」
「お前が解雇されるなんざ……さては依頼人に盾突いたか」
お前らしいなと鼻で笑う。
ゼルは膝に肘をついたまま、手振りを加えた。
「バカ言え。盾突く位ならハナっからンな仕事請けねっつの」
なるほどそれもそうか、とジストは思う。
根が真面目なゼルは一度請け負った仕事を投げ出すようなことはしないのだろう。
ジストには考えられぬことだったが。
「殺されたんだよ。依頼主のオッサンが」
自分の責任だとでも思っているような口ぶりだった。
「ああ、あの時のあれか」
ノービルティアで要人が死んだのはここ五年で一件だけだ。
「なんだよ、ジスト知ってんのか」
当たり前だろう、珍しく知人と呼べる奴だった。
そう言おうと思って、やめた。
「とーぜんでしょ。ジストさんを誰だと思ってるの。本業以上の副業よ?」
ゼルは大仰に手をひらひらと振る。
エナが居ない時のジストの対応に慣れが出てきているらしい。
正直、悪い気はしなかった。

