砂漠の賢者 The Best BondS-3

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「エナ! やるじゃないか! 才能あるよアンタ!」


拍手を背に馬車に戻ったエナを出迎えたのは、興奮冷めやらぬ雑技団のオーナー兼座長の女性だった。

客引きをしていたあの女性だ。

名をヴィルマという。


エナは黒髪のかつらを取り、地毛を結わえていた紐を解いた。

頭を数回振ると、汗ばんだ頭皮に風が染み込んだ。


「アルタ座っていっても、今回サブメンバーでしょ? それでこんなけ人集まるって、やっぱ凄い人気なんだね」

「この街の人間はブランドが好きだからね。アルタイル座ってブランドが好きなんだろ。まぁ、人数は少なくても、メインメンバーの講演に引けを取らない仕上がりになった自信はあるけどね」

あんたのお陰でね、とヴィルマはウインクで告げた。


「ほんと、体は柔らかいしバネもある。体のバランスといいスタミナといい、一体どうやって鍛えあげたんだい」


ヴィルマの褒め殺し攻撃にエナは肩を竦めた。


「退屈知らずの人生だもん」

「だろうね。どうだいあんた、正式にアルタ座に入らないかい?」


エナはヴィルマの顔を見て何度か瞼を瞬かせた。

口がゆっくりと弧を描いていく。


「ダーメ。言ったでしょ? 退屈知らずの人生だ、って。……あたし、行くね」


小さなずた袋を掴んだ。


「ああ、捜し人だね」


ヴィルマにはある程度の事情を説明していた。

大道具を担当していた女性が宿場町で急に産気付いたので、エナがその補充員を買って出たわけだ。

最初は小娘の戯言と取り合ってくれなかったヴィルマに、エナは即興で舞を踊った。
息の乱れを見せず、体力には自信があることを示してみせたのだ。


ヴィルマの目はすぐに煌めき、アルタ座の講演に参加することと引き換えにノービルティアに同行させてもらえることになったのだ。