砂漠の賢者 The Best BondS-3

だからジストは苦笑いで相槌を打ちながらゼルの横顔に視線を向ける。


「本当だよねー。アレ? でも、頼られるの嫌がってなかったっけ?」


揚げ足を取るような言葉にゼルは即座に頷いた。


「ったり前だろ。他に大事なモン抱えてンだ。夢以外の荷物は持てねぇよ。……なのに……」

「なのに?」


促され、ゼルは苦虫を噛み潰したような顔をした。

それは、怒りのようでもあり、嫌悪感のような表情でもあった。


「オレがいくら放っておいてくれって言っても……アイツは……エナは……」


言葉を切り、一瞬言い澱む。


「オレのことまで抱えようとしやがる。まるで自分の荷物かのように、抱えやがるんだ。理解できねェよ」


吐き捨てる言葉には苛立ちが多分に含まれていて。

だが表情は先ほどとは少し変わって、眉を顰め、苦悩を色濃くしている。

答えがわかりそうでわからない。

手をのばせば届きそうなのに、微妙に届かない。

そんなもどかしさと。

頭での理解と、感情のズレからくる、軋みのような怒りと苦悩が入り混じり。

何が正しいのか、何があるべき姿なのか、何が自分らしいということなのか。

わからなくなっていた。


「……理解できねっケド……。抱えられたら抱え返さなきゃフェアじゃねンだろなって……思ったりすンだよな」


諦めたように、ゼルは溜め息を吐いた。

それは、感情から来る言葉。

義理人情に厚い、彼らしい言葉だった。


感情や理性や信念が纏まらないことに迷いはあるものの、それらのどの言葉もきっと彼の中の真実で、彼の本音。


「……アンタはなんでエナの護衛なんてやってんだ?」

「ん?仕事だけど?」


ジストの言葉が迷いを断ち切らせてくれるのではないかと心の何処かで期待していたのかもしれない。

ジストの返答を鼻で笑った。


「嘘言え。そンくらい、オレンだってわかるぞ。何処にデート一回で命差し出す酔狂なバカが居ンだっつの」

「ここに居るジャン?」


自らを指さして主張する彼に対し眉間に皺を寄せた。


「アンタってホント、真面目さの欠片もねェな」

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