砂漠の賢者 The Best BondS-3

ジストは確かにあまのじゃくの所がある。

好きな者程虐めるタイプだろうし、嫌だと言われたら余計やりたくなるタイプだろう。

追い掛けられると逃げる癖に、逃げられると追いたくなる、という厄介な男だ。

そんなジストは、人に多くを求めない。

それは人に負担をかけるのがどうとかいう問題ではなく、そもそも人に何の期待も抱かないということなのだろうが、それが無意識の優しさではないかとゼルは最近思うのだ。


「ん? 押し付けがましいのが好みか? ゼルちゃんてば、そんなこと言ってたら女で苦労するぜぇ?」

「どーゆー流れだよっ?! っつか、間違いなくアンタの好みのが苦労すンだろ!」


半分破れかぶれで言った言葉だったが、ジストの反応にゼルは目を点にした。

なんと、ジストが声をたてて笑ったのだ。

ほんの一瞬ではあったが、ちゃらんぽらんキャラの時の笑い声とは違う、素の笑い声。


「違いねえな」


煙草を取り出しながらのその声音は上機嫌そのもので、ゼルは呆れる外無かった。

苦労すると言われて楽しそうな反応をする神経が理解出来ない。


「エナも変わってっけど、アンタも相当なモンだな」


エナとジスト。この二人の感覚を理解しようとすること自体間違っているのかもしれない。


「あんな猪突猛進娘と一緒にされるのは心外だなあ。」


はは、と今度はわざとらしく笑い、ジストはゼルの耳元に顔を寄せた。

先程のことがあるのでゼルは警戒をあらわにし、耳を塞ごうとした。

ぼそりとした声が響く。

男の自分が聞いてもエロい声だよなぁ、と思った矢先。


「置いてかれてスネてんの? そゆ顔してるよ、ゼールちゃん」


語尾に付いたハートをこれほど迄に欝陶しいと思うことはこの先二度と無いだろう。


「…なっ! ンなんじゃねぇよっ!」


咄嗟に言い返してみたものの、声はどんどん小さくなった。


「…ンなんじゃ、ねェケド…」


ジストは何も言わず、ただくすくすと笑うのみ。


「いつもいつも一人で突っ走りやがって、って…」


消えていく声をゼル自身、頼りなげなものだと思った。




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