「……で、結局、あいつは今……」
聞きたくないと思った。
聞かずとも、彼女の行動位、容易に想像がつく。
それでも聞いてしまうのは、結局は……。
「馬車に飛び乗っていったらしいよ? 最終便のね。」
予想通りの解答に泣きたくなったところで誰がゼルを責められようか。
足元に伸びる影を見ながら呆れ混じりの溜め息一つで現状を受け入れたゼルはある意味利口と言えるのかもしれない。
「あのヤロ……勝手な行動すンなっつったン誰だよ」
愚痴りたくもなるというものだ。
言った本人が約束も省みず突っ張っていくのだから。
僅かに怒りを覚えたゼルに気付き喉をくつくつと鳴らしたジストは片目を細めた。
「……さて、どうする?」
その言葉に、視線をジストへと戻す。
「どうするって言われてもな…。アンタはどうすンだよ?」
自分の中で結論は既に出ていた。
もはやエナもこの町には居ないことに感づき、聞きたくないと思いながらもつい聞いてしまうのは、それは。
エナを追うことを決めているからだ。
自分はきっとエナを追うのだろうとわかっていたからだ。
傲ガイ不遜な男は口元に孤を描いた。
「近くで姫を護るのが騎士の役目デショ? ……てゆかさ」
にっこり笑ってみせたジストの体には冷え冷えとした空気。
「手、離さない?」
言われてはじめて、ゼルはずっとジストの腕を掴んでいたことに気付いた。
義手で力加減も考えずに掴んでいたのだから、おそらく相当痛かったに違いない。
だが、腕を摩りながらジストが吐いた悪態といえば。
「お前、ソッチの気でもあるわけ?」
にやにやと笑いながら耳に息を吹き掛けられ、ゼルは顔が紅潮していくのがわかった。
勿論、怒り故に。
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