それとほぼ同時刻。
ゼルは町中を走り回りエナとジストを捜していた。
先ほど立ち寄った質屋で有力な情報を得たことで、例の男がもうこの町に居ないことがわかったからだ。
これ以上の捜索は意味がないことを一刻も早く教えねばならないとゼルは懸命に走った。
エナもジストも目立つ容姿の為、町の住人らに聞けば目撃証言はいくらでも出てきたが、いかんせん人の記憶に残りやす過ぎて、最新の目撃証言がわからない。
結局ゼルがジストを見つけたのは証言を追った先ではなく、女性の黄色い声を追った先だった。
前方からやけに高い声が多く聞こえるなと思っていたら、その中心に居たのがジストだったというわけだ。
「ジスト!」
女性の舌打ちにめげることなくゼルはジストと女性の歓談の間に割って入った。
「アンタ何ノンキにくっちゃべってンだよ! それどこじゃねェぞ、早くエナ見つけねェとっ!」
喰らいつくゼルを尻目に、ジストはやはり悠長に女性達にさよならを告げ、手を振った。
何やら、後日電話がどうとかと約束を取り付けるような会話が聞こえないでもなかったが、ゼルはとりあえず無視し、ジストの腕を引いて取り巻きの輪から連れ出した。
「ジスト、あの男、行商人だっ!もうこの町には…」
矢継ぎ早に得た情報を伝えようとしたゼルだったが、商業の町トルーアで情報屋の名を欲しいままにしていたジストは肩を竦めてみせた。
「らしいな」
「らしいなってアンタ、わかってンならさっさとエナ見つけねェと…! 足取りが掴めなくなったらどーすンだよ!」
一言で片付けるジストに苛立ちを覚えたのも束の間。
ジストの次の言葉にゼルはぴたりと口を閉ざした。
「今の可愛いレディーからの情報なんだけど、走り去る馬車を追うって大立ち回りした女の子が居たって話よ? しかもその女の子ってのが…」
嫌な予感が嫌な現実であることを知りながらゼルは恐る恐る先を促した。
「………まさか………」
「そ。大立ち回りする蒼と翠の目の女の子ってそうそう居ないデショ?」
エナが居ないにも関わらず敢えて茶化すように言うのは、事の重大さをごまかす為だろうか。
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