「……?」
殺気だつとまでは行かなくても、不機嫌そうな顔くらいしても良さそうなのに、とリゼは眉于を潜めた。
エナの反応もおかしなものだった。
エナはリゼではなく、ジストを睨みつけたのだ。
その視線で粗方悟ったリゼの先でジストが唇の端を吊り上げた。
紅い舌をちらりと覗かせた男は。
「お前とのことは、もう忘れたってさ」
二人の眉間に皺が寄る。
リゼと――エナに。
「より忘れたいのは、貴様の方だっ!!」
エナの鉄拳が飛ぶ。
自由に体を動かせないストレスもあってか、無事だったエナの利き腕はこの一週間、このような形で大活躍している。
それをまともに頬に受けながらも楽しそうな顔を崩さないジストにエナの神経はますますささくれ立つ。
「笑うなっ! 腹立つ!!」
勢いよく立ち上がり、なんなら紅茶でもかけてやろうかと言わんばかりのエナに反応したのはゼルだった。
「腹立つのはオレだっ! 食いモンの前で暴れンな! 埃が入るだろーがっ」
テーブルの上に並ぶ料理を庇いながら噛みつくゼルに、怪我を忘れたように立ち上がったエナは。
「小さいこと抜かすな! 多少埃が入っても死なん! あんたのご飯はそれ以上に美味い!」
「キレながら誉めるとか複雑なことすンな!」
ぎゃいぎゃいとよくわからない言い合いを始めた二人にハリスグランは忍び笑いを漏らした。
余りに低俗且つ無益な三人の会話――もしくは言い争い――だというのに、そこには確かな絆が築かれていて、それを目の当たりにした遠縁の心中が手に取るようにわかったからである。
「……積み重ねてきた時間の差だけはどうしようもありませんね」
溜め息と共に吐き出されたリゼの言葉はどこか楽しそうなもので。
「仕方ありません。プラチナオークションが開催されるのは二ヵ月後、精霊祭という催しの最中です。それまでは此処に逗留してもらいますが……くれぐれも目立たないようにしてください」
ぴたり、とエナが口をつぐむ。
「それが、条件?」
拍子抜け、というのがエナの正直な感想だった。
だが、ゼルやジストは、それを結構な難題と受け取り顔をしかめた。
殺気だつとまでは行かなくても、不機嫌そうな顔くらいしても良さそうなのに、とリゼは眉于を潜めた。
エナの反応もおかしなものだった。
エナはリゼではなく、ジストを睨みつけたのだ。
その視線で粗方悟ったリゼの先でジストが唇の端を吊り上げた。
紅い舌をちらりと覗かせた男は。
「お前とのことは、もう忘れたってさ」
二人の眉間に皺が寄る。
リゼと――エナに。
「より忘れたいのは、貴様の方だっ!!」
エナの鉄拳が飛ぶ。
自由に体を動かせないストレスもあってか、無事だったエナの利き腕はこの一週間、このような形で大活躍している。
それをまともに頬に受けながらも楽しそうな顔を崩さないジストにエナの神経はますますささくれ立つ。
「笑うなっ! 腹立つ!!」
勢いよく立ち上がり、なんなら紅茶でもかけてやろうかと言わんばかりのエナに反応したのはゼルだった。
「腹立つのはオレだっ! 食いモンの前で暴れンな! 埃が入るだろーがっ」
テーブルの上に並ぶ料理を庇いながら噛みつくゼルに、怪我を忘れたように立ち上がったエナは。
「小さいこと抜かすな! 多少埃が入っても死なん! あんたのご飯はそれ以上に美味い!」
「キレながら誉めるとか複雑なことすンな!」
ぎゃいぎゃいとよくわからない言い合いを始めた二人にハリスグランは忍び笑いを漏らした。
余りに低俗且つ無益な三人の会話――もしくは言い争い――だというのに、そこには確かな絆が築かれていて、それを目の当たりにした遠縁の心中が手に取るようにわかったからである。
「……積み重ねてきた時間の差だけはどうしようもありませんね」
溜め息と共に吐き出されたリゼの言葉はどこか楽しそうなもので。
「仕方ありません。プラチナオークションが開催されるのは二ヵ月後、精霊祭という催しの最中です。それまでは此処に逗留してもらいますが……くれぐれも目立たないようにしてください」
ぴたり、とエナが口をつぐむ。
「それが、条件?」
拍子抜け、というのがエナの正直な感想だった。
だが、ゼルやジストは、それを結構な難題と受け取り顔をしかめた。

