砂漠の賢者 The Best BondS-3

 娯楽の街、プレタミューズには誰でも参加出来るオークションと、資産に縛りがあるものとがある。
 それは外交を行う街の住人であれば誰もが知っていることだ。

「当然でしょ、ジストさん情報屋だよ? 資産が三百億越えの限定オークション、因みに現在参加資格を持つのは世界に八百二十六人。内、ノービルティアには三百二十七人。なんなら他国の内訳も言おうか?」

 リゼは感心したように、いいえ結構ですよ、と答えた。

「素晴らしい情報量ですね。では、これも知っていますか。SS級の珍品が取り引きされる……プラチナオークションという存在を」

 エナが首を傾げる横でジストは少し考え込む素振りを見せる。

「名前だけは。確か……六人だか七人だかで構成されてると聞いたかな」
「それは少々情報が古いようですね。現在は八人になっています」

 そうか、と呟くジストは正(マサ)しく情報屋らしい表情をしていた。
 良く言えば真面目な、悪く言えば小賢しそうな面持ちで、より情報を明確にするために彼は端的な質問を繰り出す。

「資格は?」

「資産一千億に加え、家柄が求められます」

 たったこれだけの答えで、彼は得心がいったらしい。
 同時に興味も薄れたらしく、体の重心を後方に下げて緩慢な仕草で煙草に火をつけた。

「ってことは……ああ、増えたのはダルの若造か」

「流石ですね。その様子だと残り七人の見当もついているのでしょうね」

 ジストが吐き出した煙が風下に居るエナの方に流れていく。
 普段は文句を言うエナだが、この時ばかりは煙の存在など気にも止まらなかった。

「家柄と言われりゃ、まあだいたいは、な。少なくとも、目の前に二人居るわけだし?」

「儂はあんな悪趣味なもんに参加なんぞせんわい」

 ハリスグランが突如会話に飛び込む。
 ジストは不可思議な笑みを浮かべた。

「あんたはそうでも、あいつは違ったろう? 今の話だとプラチナは家名で参加するみたいだし? だとしたら、参加資格は引き継がれてるはずだ」

 エナは口をあんぐりと開けてその会話を聞いていた。
 ジストが言う『あいつ』が誰を指すのかは皆目検討がつかなかったが、彼の人脈は想像以上に多岐に渡っているらしい。