砂漠の賢者 The Best BondS-3

「ゼルもジストも、早く座って! 始めるよ!」

 エナの一声にラファエルが飛び降りて原っぱを丸く駆け回った。

「あぁ、だから松葉杖無しで歩いちゃ駄目だってば」

 松葉杖を武器か何かと勘違いしている節があるエナは松葉杖を放り投げ、結果、丸太椅子まで運ぶのはジストの役目となる。
 安定の悪い椅子に腰掛けた面々はゼルの絶品料理に舌鼓を打ち、ハリスグランに至っては是非料理人として召し抱えたいと言い出した。
 だが、オレは生涯剣士だというゼルの熱意に負け、ノービルティアに居る間だけでもという話で落ち着いた。
 そしてお茶会も終盤を迎える頃、話はハセイゼンへと移っていく。

「元々、ハセイゼン家はハリスグラン家の分家筋じゃからのう」

 きっかけはハリスグランのそんな一言だった。
 少し離れた木陰で丸まって眠るラファエルを見ていたエナは、ふと視線をハリスグランに戻した。

「分家? ってことは戸籍上、ハリスじじとリゼって遠縁ってこと?」
「百年以上遡らねばなりませんがね」

 エナの問いに答えたのはリゼで、ゼルが少々驚いた声をあげた。

「なんだ、アンタは知ってたンかよ」

「当たり前でしょう、ハセイゼン家は元々歴史に明るい家柄ですから」

 話によると、ハリスグランは医者や科学者を多く輩出する家系で、分家のハセイゼンは百年からこっち、考古学や歴史研究の分野で著しい功績をあげたらしい。

「まあ、父は分家ということに劣等感と憂いを感じていたようですね。星読と共に再び科学の血を、と思っていたようですよ」

 馬鹿な人ですよねぇ、と言うリゼの言葉はこの場に居る誰でもなく、自分自身に向けられているようだった。

「ね、リゼ」

 思ったことは口にしないと気が済まないエナはデザートのババロア――勿論ゼルの手作りだ――を呑み込んで声をかけた。

「ハセイゼンってさ、古代文明にすごい興味示してた、よね?」

 エナにしては珍しい、相手の反応を見ながらの言葉だった。

「ええ、そうですが……それが何か?」
「教えて欲しいこと、あるんだけど」

 真摯なエナの瞳が揺れたことを誰一人として見逃さなかった。

「エナちゃん……?」

「そういやオマエ、あん時……」