「……誘う……?」
何も伝えられずに抱えあげられ、怪我の痛みなどお構い無しの連行ぶりからすると、リゼの疑問は尤もだと言えよう。
『誘い』というよりも、あれでは拉致だ。
「要らない気遣い、どうもありがとうございます」
リゼの声には皮肉の刺がたっぷり含まれていた。
だが、エナも負けていない。
「いいの、お礼なんて。嫌がらせなんだから」
飛び込んできたラファエルを片腕だけで受け止めながら、拉致もお茶会も嫌がらせの一環だと、エナははっきりと口にした。
嫌がらせの為に此処まで体を張るあたり、流石エナだ。
「嫌がらせ、ですか」
「そ。リゼ、太陽浴びるの、嫌いでしょ」
確かにそれは図星だったのだがリゼは首を傾げた。
記憶の何処にもそのような会話をした覚えなどなかったからだ。
「私そんな事言いました?」
エナはおどけるように肩を竦めた。
「そんなけ陰気な性格してればわかるっての。ジメジメしてて、黴(カビ)かキノコみたい。だから、天日干ししてやろーと思って」
嫌がらせと言いながらも、リゼのことを考えた上での行動だったわけであるが、それはそれで随分な内容である。
「まあホラ、食べよ」
エナは籐のランチボックスからパンを取り出し、リゼに差し出した。
だが、凝視するばかりで受け取る素振りをみせない。
おおかた薬が盛られているのではないかとか、更に何かを企んでいるのではないかと警戒したのだろう。
今さら薬を盛ったところで何のメリットも無いというのに、この男が考えそうなことだ。
「お腹、いっぱい?」
「いえ、そういうことではなく……」
人を信じきれないのは貴族社会で育った故か。
人は金を持つと人を信用出来なくなる。
油断すると足元を掬われるのもまた、事実であるから。
「じゃあ食え!! ゼルの作るモンは最高なんだから」
無理矢理パンを押し付けると、リゼは躊躇いながらもそれを受け取る。
「……いただきます……」
結局、きらきらとした彼女の瞳に負けたリゼは皆の視線が集まる中で一口、パンをかじった。
その顔が綻ぶのをエナは確かに見た。
柔和な顔に似合う、柔らかい陽射しのような笑み。
「……おいしいですね」
その言葉にゼルが鼻の頭を照れたように掻き、ハリスグランが、ふぉっふぉっと笑った。
何も伝えられずに抱えあげられ、怪我の痛みなどお構い無しの連行ぶりからすると、リゼの疑問は尤もだと言えよう。
『誘い』というよりも、あれでは拉致だ。
「要らない気遣い、どうもありがとうございます」
リゼの声には皮肉の刺がたっぷり含まれていた。
だが、エナも負けていない。
「いいの、お礼なんて。嫌がらせなんだから」
飛び込んできたラファエルを片腕だけで受け止めながら、拉致もお茶会も嫌がらせの一環だと、エナははっきりと口にした。
嫌がらせの為に此処まで体を張るあたり、流石エナだ。
「嫌がらせ、ですか」
「そ。リゼ、太陽浴びるの、嫌いでしょ」
確かにそれは図星だったのだがリゼは首を傾げた。
記憶の何処にもそのような会話をした覚えなどなかったからだ。
「私そんな事言いました?」
エナはおどけるように肩を竦めた。
「そんなけ陰気な性格してればわかるっての。ジメジメしてて、黴(カビ)かキノコみたい。だから、天日干ししてやろーと思って」
嫌がらせと言いながらも、リゼのことを考えた上での行動だったわけであるが、それはそれで随分な内容である。
「まあホラ、食べよ」
エナは籐のランチボックスからパンを取り出し、リゼに差し出した。
だが、凝視するばかりで受け取る素振りをみせない。
おおかた薬が盛られているのではないかとか、更に何かを企んでいるのではないかと警戒したのだろう。
今さら薬を盛ったところで何のメリットも無いというのに、この男が考えそうなことだ。
「お腹、いっぱい?」
「いえ、そういうことではなく……」
人を信じきれないのは貴族社会で育った故か。
人は金を持つと人を信用出来なくなる。
油断すると足元を掬われるのもまた、事実であるから。
「じゃあ食え!! ゼルの作るモンは最高なんだから」
無理矢理パンを押し付けると、リゼは躊躇いながらもそれを受け取る。
「……いただきます……」
結局、きらきらとした彼女の瞳に負けたリゼは皆の視線が集まる中で一口、パンをかじった。
その顔が綻ぶのをエナは確かに見た。
柔和な顔に似合う、柔らかい陽射しのような笑み。
「……おいしいですね」
その言葉にゼルが鼻の頭を照れたように掻き、ハリスグランが、ふぉっふぉっと笑った。

