砂漠の賢者 The Best BondS-3

 上層から出ていく気があるのか無いのか、全く困ったものである。
 昨日は遂にハリスグランを含む四人から散々怒られて少しは懲りたかと思っていた面々だったが。

「エナ、あんなモン用意して、今度はいったい何するつもりだったんだ?」

 いい加減うんざりとした様子でゼルが窓の外を顎で示した。
 そこには、何種類かの形に揃えられた木片が集められていた。
 誰が見てもわかる。
 昨日切り出された木を更に細かく切って運んできたのだ。
 エナは飄々と答えた。

「見ればわかるでしょ」

「さらっと昨日の続きをすンなぁぁっ!」

 ここで使わずしていつ使う、とばかりに手に入れた念願の鉄扇を握りしめるゼルから少し離れた寝台の縁に腰掛けていたジストは不機嫌丸出しの顔で座っている。
 エナ以上にジストとリゼの間には確執があるらしく、リゼが居ると喋ろうともしない。
 が、それに気付いている筈のエナの無視っぷりは素晴らしいものであった。
 つまり、全く頓着していないのだ。
 事件を越える度に自由奔放さに拍車がかかっているのではないか、という疑問はなにもゼルだけのものではないだろう。

「何をしたいのかは知らんが、使える男手が二つもあるというに、お前さんも頑固じゃの」

 昨日こそ怒ったものの、ハリスグランは元々エナの突飛な行動を楽しんでいるらしい。
 呆れを含む声にもそれが滲み出ている。
 流石は年の功といったところだ。

「使えない男手で悪かったですね」

 エナは奇跡的にも、出血を止めてしまえば見た目ほど深手ではなく――むしろ問題なのは未だに軽く残る吐き気の方らしい――全治一ヶ月程度だろうと告げられたのだが、リゼは全治一ヶ月半と診断されていた。
 それでも肋骨が三本折れていて左腕にはヒビも入っていることを考えれば全治一ヶ月半というのは驚異的な速さだ。
 見事な折り方じゃ、これなら治るのも早かろう、と感心したハリスグランと目を合わせられなかったのはエナとゼルでだけである。
 当の実行犯は素知らぬ顔をしていたのだから。
 エナ自身、一発くらいリゼを殴りつけてやろうと思っていたのだが、青アザだらけのリゼを見て――一週間経った今でも痛む殴打だ――気が削がれた程の惨状だったというのに、ジストは顔色一つ変えなかった。